≪宅建試験対策≫不法行為の消滅時効と履行遅滞
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
不法行為の消滅時効と履行遅滞
「不法行為」とは、違法(故意・過失)に他人の権利、利益または身体を侵害した者に損害賠償責任を負わせることによって、被害者が被った損害の公正な補填を図ることを目的とする制度のことをいいます。
「消滅時効」とは、権利を行使しないという事実状態が一定期間継続することにより、その権利を消滅させる制度のことをいいます。
「履行遅滞」とは、履行が可能なのに履行期を過ぎても債務者が履行しないことをいいます。
履行遅滞になる時期:不法行為成立時(損害発生時)
消滅時効:*損害および加害者を知った時から3年間
*不法行為のときから20年間
不法行為とは?
「不法行為」とは、違法(故意・過失)に他人の権利、利益または身体を侵害した者に損害賠償責任を負わせることによって、被害者が被った損害の公正な補填を図ることを目的とする制度のことをいい、「違法行為」ということもできます。
不法行為も、「契約」と同様に債権の発生原因の一つです。
損害賠償請求権を認める行為は、「不法行為」のほかにも、「債務不履行」や「担保責任」があります。
不法行為には、過失責任主義に基づく「一般的不法行為」と無過失責任主義に基づく「特殊的不法行為」に分かれます。
不法行為の損害賠償請求権の消滅時効
第724条
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
不法行為の被害者が持つ損害賠償請求権は、損害および加害者を知ったときを知った時から3年間で時効により消滅します。
たとえば、5月11日のある日Aの甲建物が壊されていることを発見しました。甲建物を壊した犯人は当初はわかりませんでしたが、Aは8月30日に犯人はBだと知りました。
この場合、被害者Aが加害者Bに対する有する損害賠償請求権は損害および加害者を知った時から3年後に時効消滅します。
ここでの注意は、不法行為による損害賠償請求権が時効消滅する起算点は、損害および加害者を知ったときです。
なのでこの場合の起算点は、損害と加害者をどちらも知った8月30日です。
5月11日の時点では、損害しか知らないので時効消滅は進行しません。
不法行為による損害賠償請求権の時効消滅は、損害と加害者をどっちも知っていなければスタートしない。ということを押えてください。
不法行為を知らないときの消滅時効
被害者はいつ損害および加害者を知るかわからないので、「損害及び加害者を知った時から3年」の期間制限だけだと、いつまでたっても法律関係が確定しません。
なので不法行為の損害や加害者がわからない場合、不法行為の時から20年を経過すれば、損害賠償請求権は消滅します。
先ほどの例で解説すると、
たとえば、甲建物を壊されたことは知ったけど被害者Aは犯人がわかりませんでした。
この場合、被害者Aは甲建物を壊された時(不法行為の時)から20年経過すれば損害賠償請求権が時効消滅してしまいます。
加害者がわからなければ、被害者Aは損害賠償請求権を請求する相手がいませんので、不法行為が行われたときから20年以内に加害者を見つけ出す必要があるということです。
この場合の不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、不法行為の時なので、注意しましょう!
不法行為の損害賠償債務の履行遅滞
不法行為の加害者が負う損害賠償債務は、不法行為成立(損害発生)の時から直ちに遅滞となります。(判例)
「〇月×日に損害賠償するから!」と言って、不法行為をする人はいないので、損害賠償債務は期間の定めのない債務になります。
たとえば、Aは見知らぬ通り魔Bから暴行を受けました。
この場合、加害者Bが被害者Aに負う損害賠償債務は、暴行したときから履行遅滞になります。
期間の定めのない債務の原則は、債権者が債務者に請求したときから履行遅滞となります。
履行遅滞についてはこちら→履行遅滞とは?
しかし、この原則を不法行為に適応してしまえば被害者Aは見知らぬ加害者Bを見つけ出さないと損害賠償請求することができません。
これでは被害者の保護にならないので、被害者保護の観点から不法行為の場合から不法行為の時から履行遅滞になると定めました。
なので、加害者は損害発生から完済に至るまでの遅延損害金を支払わなければなりません。(判例)
期限の定めのない債務の”不法行為の履行遅滞”と”債務不履行の履行遅滞”
期間の定めのない債務の原則は、債権者が債務者に請求したときから履行遅滞となります。
たとえば、建物の売買契約をして買主が引き渡し日を決めずに建物代金を支払った場合、買主が「建物を引渡して!」と売主に請求したときから、売主の建物引き渡し債務は履行遅滞となります。
しかし、不法行為の場合は例外で被害者保護の観点より、不法行為のときから履行遅滞となります。
この違いはよく出題されるので、必ず押さえておきましょう。
≪宅建試験対策≫不法行為の過失相殺
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
不法行為の過失相殺
「不法行為」とは、違法(故意・過失)に他人の権利、利益または身体を侵害した者に損害賠償責任を負わせることによって、被害者が被った損害の公正な補填を図ることを目的とする制度のことをいいます。
「過失相殺」とは、一方が過失責任を負う場合に、相手方の過失を考慮してその責任などを軽減することをいいます。
不法行為につき被害者による故意または過失があったときは、裁判所は加害者からの主張がなくても、これを考慮して、損害賠償を定めることができます。
不法行為とは?
「不法行為」とは、違法(故意・過失)に他人の権利、利益または身体を侵害した者に損害賠償責任を負わせることによって、被害者が被った損害の公正な補填を図ることを目的とする制度のことをいい、「違法行為」ということもできます。
不法行為も、「契約」と同様に債権の発生原因の一つです。
損害賠償請求権を認める行為は、「不法行為」のほかにも、「債務不履行」や「担保責任」があります。
不法行為には、過失責任主義に基づく「一般的不法行為」と無過失責任主義に基づく「特殊的不法行為」に分かれます。
過失相殺とは?
「過失相殺」とは、一方が過失責任を負う場合に、相手方の過失を考慮してその責任などを軽減することをいいます。
この過失相殺は、交通事故のケースがわかりやすいです。
たとえば、Aが自動車運転中に、歩行者Bをはねてしまいました。
しかし、この歩行者Bは信号無視をしていました。
この場合、歩行者Bは運転手Aに対して損害賠償を請求することができます。
しかし、歩行者Bにも過失(信号無視)があるので損害賠償の責任及びその金額が減額(相殺)します。
不法行為の過失相殺
第722条
2項 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
不法行為につき被害者による故意または過失があったときは、裁判所は加害者からの主張がなくても、これを考慮して、損害賠償を定めることができます。
たとえば、先ほどの交通事故のケースだと運転手A(加害者)が損害賠償請求を受ける際に、運転手A(加害者)が「歩行者B(被害者)の信号無視(過失)があった!」と主張しなくても裁判所は歩行者B(被害者)の過失を考慮して損害賠償を定めることができます。
ここで注意なのが、裁判所は被害者の過失を考慮して損害賠償額を定めることが”できる”というところです。
”定めなければならない”ではないので必ずしも過失相殺できるとは限りません。
宅建試験では、下記のようなひっかけ問題がよく出題されます。
不法行為につき被害者による故意または過失があったときは、裁判所は加害者からの主張がなくても、これを考慮して、損害賠償額を定めなければならない。
債務不履行の過失相殺との違い
債務不履行があった場合の債権者に過失があったときも、過失相殺されます。
関連:債務不履行による損害賠償
しかし、債務不履行の場合に債権者に過失があったときは、裁判所は債務者からの主張がなくても債権者の過失を考慮し、損害賠償額を定めなければなりません。
”定めなければならない”なので、必ず過失相殺されます。
不法行為の過失相殺は任意ですが、債務不履行の過失相殺は義務なのです。
損害賠償権が過失相殺される場合 | |
---|---|
不法行為 | 裁判所は過失を考慮して損害賠償額を定めることができる (過失相殺は任意) |
債務不履行 | 裁判所は過失を考慮して損害賠償額を定めなければならない (過失相殺は義務) |
このように似ているけど答えが違う論点は、宅建試験で問われやすい論点です。
宅建合格するには細かいですが、しっかり押さえておく必要があります。
宅建試験をわかりやすく解説!*権利関係法令(民法)*~重要過去問まとめ~
宅建試験の問題数は50問です。
全50問中、権利関係法令(民法)は毎年14問程度出題されています。
宅建試験の合格点は毎年37点前後です。
宅建試験をわかりやすく解説!*権利関係法令(民法)*~重要過去問まとめ~
正直に、民法は難しく、判例も多く出題されるため勉強しても点数に結びつけにくい教科です。
しかし宅建合格を目指すとなると民法では14問中8問は得点しておきたいです。
逆をいえば、民法の正解率は50%をとれていたら宅建合格する可能性が上がります。
民法で50%の正解率を得るには、重要ポイントを単純暗記するだけでは無理です。
問題を解く→復習をする→問題を解く→見直しをする、このサイクルを繰り返し行うことが宅建合格の確実な方法です。
- 宅建試験をわかりやすく解説!*権利関係法令(民法)*~重要過去問まとめ~
- 民法「総則」
- 制限行為能力者
- 意思表示
- 代理制度
- 条件・期限・時効
- 共有・占有
- 物権変動
- 民法「総則」
≪宅建試験対策≫不法行為の成立要件
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
不法行為の成立要件
「不法行為」とは、違法(故意・過失)に他人の権利、利益または身体を侵害した者に損害賠償責任を負わせることによって、被害者が被った損害の公正な補填を図ることを目的とする制度のことをいいます。
不法行為が成立する要件は、下記の4つを満たしている必要があります。
- 一般的に行為者に責任能力があること
- 故意または過失によること
- 他人の権利(利益)を違法に侵害したこと
- その行為と損害が発生したことの間に因果関係があること
不法行為とは?
「不法行為」とは、違法(故意・過失)に他人の権利、利益または身体を侵害した者に損害賠償責任を負わせることによって、被害者が被った損害の公正な補填を図ることを目的とする制度のことをいい、「違法行為」ということもできます。
不法行為も、「契約」と同様に債権の発生原因の一つです。
損害賠償請求権を認める行為は、「不法行為」のほかにも、「債務不履行」や「担保責任」があります。
不法行為には、過失責任主義に基づく「一般的不法行為」と無過失責任主義に基づく「特殊的不法行為」に分かれます。
不法行為の成立要件
一般的不法行為が成立するためには、下記の4つを満たしている必要があります。
- 一般的に行為者に責任能力があること
- 故意または過失によること
- 他人の権利(利益)を違法に侵害したこと
- その行為と損害が発生したことの間に因果関係があること
ひとつずつ詳しく解説していきましょう!
①一般的に行為者に責任能力があること
行為者とは、不法行為を行った「加害者」を指します。
責任能力がある責任能力者とは、制限行為能力者ではない者とイコールではありません。
「責任能力」とは、自己の行為が不法な行為であって法律上の責任が生じることを理解できる能力をいいます。
なので、精神障害により行為の責任を弁識する能力を欠く者は原則として責任能力がないと判断されます。
第713条
精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。
ただし故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。
判例で満11歳の行った不法行為につき責任能力ありと判断したケースもあり、いくら未成年でも自己の行為の責任を弁識する能力があれば、損害賠償責任を負う必要があります。
第712条
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
制限行為能力者がした行為でも、不法行為として成立するので注意が必要です。
②故意または過失があること
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
この故意または過失は、損害賠償請求権者である被害者が立証しなければなりません。
③他人の権利(利益)を違法に侵害したこと
上記の同条(第709条)に記されている”法律上保護される利益”を侵害する行為は、不法行為と判断されます。
法律上保護される利益とは、一般的に所有権、担保物権、債権、知的所有権、人格権など幅広い権利に適応されます。
④その行為と損害が発生したことの間に因果関係があること
損害賠償請求権を有する被害者が受けた損害が、行為者(加害者)がした行為について因果関係がなければ、行為者のした行為は不法行為とみなされません。
発生した損害は「財産的損害」と「精神的損害」の2種類に分けれます。
- 「財産的損害」:直接の被害額(積極的損害)と不法行為がなければ得られたはずの利益(消極的損害)のこと
- 「精神的損害」:被害者の精神的苦痛のこと
不法行為が成立しない場合
「正当防衛」と「緊急避難」の場合は、損害賠償の責任を負いません。
第720条
1項 他人の不法行為に対し、自己又は第三者の権利又は法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をした者は、損害賠償の責任を負わない。
ただし、被害者から不法行為をした者に対する損害賠償の請求を妨げない。
2項 前項の規定は、他人の物から生じた急迫の危難を避けるためその物を損傷した場合について準用する。
- 正当防衛:他人の不法行為に対して自己や第三者の権利あるいは法律上保護される利益を防衛するため、やむを得ず加害行為をしてしまうこと。
- 緊急避難:他人の物から生じた急迫の危難を避けるために行われた侵害行為のこと
≪宅建試験対策≫請負の重要要点まとめ
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
請負の重要要点まとめ
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
仕事の完成を注文する側を「注文者」といい、仕事の完成を請け負う側を「請負人」といいます。
請負は請負人が注文者にある仕事を完成することを約束し、これに対して注文者がその完成した仕事の対価(報酬)を支払うことを約束することによって成立します。
請負契約は諾成契約なので、口約束で成立します。(書類等不要)
請負契約の請負人の義務
請負人が注文者に対して負う義務は下記の2つです。
- 仕事の完成義務:請負人は下請負人に仕事の完成を委ねることも可
- 請負人の担保責任:請負人は注文者に対しその瑕疵の担保責任を負う
請負人が注文者に対して負う瑕疵担保責任は無過失責任とされます。
「請負契約の請負人の義務」について詳しい解説はこちらです。
請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利
請負人に瑕疵担保責任が生じた場合、注文者が有る権利は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権:瑕疵が重要でない場合で修補に過分の費用を要するときは、修補請求はできない。
- 損害賠償請求:修補が可能な場合は、損害賠償請求か瑕疵修補請求かどちらかを選択できる
- 契約解除権:目的物が建物の場合、いかに重大な瑕疵があっても解除権は認められない
担保責任の存続期間は
- 土地の工作物:引き渡しから5年
- 石造・れんが造・金属造などの特殊工作物:引き渡しから10年
「請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利」について詳しい解説はこちらです。
売主の担保責任と請負人の担保責任
「売主の担保責任」とは、売買によって買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主が負う無過失責任のことをいいます。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主に対する責任の追及の手段は下記の3つがあります。
「請負人の担保責任」とは、請負契約で請負人が完成させてた仕事の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人が負う無過失責任のことをいいます。
請負契約の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人に対する責任の追及の手段は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権
- 損害賠償請求
- 契約解除権
宅建試験では、売主の担保責任と請負人の担保責任を合わせた問題が出題されます。
問が売買契約の問題なのか、請負契約の問題なのかをしっかり見極めれるようにしましょう!
「売主の担保責任と請負人の担保責任」について詳しい解説はこちらです。
請負契約の注文者の義務と解除権
請負契約の請負人の義務は、「仕事の完成」と仕事の目的物の引き渡しを要するときは「引き渡し」です。
それに対して注文者の義務は、「報酬支払い」です。
この報酬支払義務は、特約がない限り後払いが原則なので、同時履行の関係にあるのは、「目的物の引き渡し」と「報酬支払い」です。
注文者は、請負人が仕事を完成しない間であれば、すでに仕事に着手していたとしても、いつでもその損害を賠償して請負契約を解除することができます。
「請負契約の注文者の義務と解除権」について詳しい解説はこちらです。
≪宅建試験対策≫委任の重要要点まとめ
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
委任の重要要点まとめ
「委任」は2年に1度の頻度で宅建本試験で出題されています。
「請負」と交互にどちらか1問出されるのが多いパターンです。
委任契約とは?
「委任」とは、法律行為などの事務処理を他人に依頼(委任)する契約のことをいいます。
委託した者を「委任者」、委託を受けた者を「受任者」といいます。
委任者が委託し受任者がこれを承諾することによって成立する諾成契約です。
委任契約は、報酬支払いを要素としていない原則として無償契約です。
なので、受任者のみが義務を負担し、委任者が無償で利益を得ることになるので片務契約でもあります。
「委任契約」について詳しい解説はこちらです。
委任の受任者の義務・委任者の義務
委任は法律行為を他人に依頼するわけなので、当事者の信頼関係を保つ必要があります。
当事者の信頼関係の中で、委任者と受任者の義務の履行は誠実に行われる必要があります。
受任者が負う義務は、下記の5つです。
- 善管注意義務
- 自己服務義務
- 報告義務
- 受け取った金銭等の引渡し義務
- 受任者の金銭消費責任
委任者が負う義務は、下記の3つです。
- 報酬支払義務
- 費用前払い義務
- 費用等の償還請求
「委任の受任者の義務・委任者の義務」について詳しい解説はこちらです。
委任の終了
委任契約は、委任者、受任者のいずれからでも特別の理由なくいつでも委任契約の解除をすることができます。
やむを得ない事由があったときを除いて、当事者の一方が相手方に不利な時期に解除をしたときは、解除による損害を賠償しなければなりません。
委任の解除の効果は、将来に向かってのみ生じます。
委任の終了事由は下記の4つです。
- 両当事者のどちらかが解除権を行使したとき
- 委任事務が完了したとき
- 委任者の死亡、破産手続き開始の決定があったとき
- 受任者の死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判があったとき
「委任の終了」について詳しい解説はこちらです。
≪宅建試験対策≫売主の担保責任と請負人の担保責任
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
売主の担保責任と請負人の担保責任
「売主の担保責任」とは、売買によって買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主が負う無過失責任のことをいいます。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主に対する責任の追及の手段は下記の3つがあります。
「請負人の担保責任」とは、請負契約で請負人が完成させてた仕事の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人が負う無過失責任のことをいいます。
請負契約の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人に対する責任の追及の手段は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権
- 損害賠償請求
- 契約解除権
宅建試験では、売主の担保責任と請負人の担保責任を合わせた問題が出題されます。
問が売買契約の問題なのか、請負契約の問題なのかをしっかり見極めれるようにしましょう!
売主の担保責任とは
「売買契約」とは、売主が特定の財産権を買主に移転することを約束し、他方、買主は売主に対して代金を支払うことを約束することによって効力を生じる契約のことをいいます。
売買の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主が負う無過失責任のことを「売主の担保責任」といいます。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主の担保責任が生じる場合としては下記の5つの場合があります。
- 全部他人物売買:権利の全部が他人に属するためにその権利を買主に移転できない場合
- 一部他人物売買:権利の一部が他人に属するためその権利を買主に移転できない場合
- 数量が不足:数量不足、または一部が契約時に滅失していた場合
- 権利の制限:他人の用益権によって権利が制限を受けている場合
- 抵当権の実行:他人の担保物権の実行により買主が所有権を失った場合
この5つの場合で宅建試験で押さえるべき場合は「全部他人物売買」「一部他人物売買」「抵当権の実行」です。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主に対する責任の追及の手段は下記の3つがあります。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある5つ場合と買主がその事実について善意か悪意かによって、売主に対する責任追及の3つの手段のどれが認められるかが異なります。
売主の担保責任が生じる場合 | 買主の 善意・悪意 |
契約解除権 | 損害賠償請求権 | 代金減額請求権 | 権利行使 期間 |
---|---|---|---|---|---|
全部他人物売買 | 善意 | ○ | ○ | ― | 制限なし |
悪意 | ○ | × | ― | 制限なし | |
一部他人物売買 | 善意 | ○ (目的不達成時) |
○ | ○ | 事実を知ってから 1年以内 |
悪意 | × | × | ○ | 契約時から 1年以内 |
|
数量が不足 | 善意 | ○ (目的不達成時) |
○ | ○ | 事実を知ってから 1年以内 |
悪意 | × | × | ― | × | |
権利の制限 | 善意 | ○ (目的不達成時) |
○ | ― | 事実を知ってから 1年以内 |
悪意 | × | × | ― | × | |
抵当権の実行 | 善意 | ○ | ○ | ― | 制限なし |
悪意 | ○ | ○ | ― | 制限なし |
売主の担保責任について詳しくはこちらで解説しています。
請負人の担保責任とは
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
請負契約で請負人が完成させた仕事の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人が負う無過失責任のことを「請負人の担保責任」といいます。
請負契約の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人に対する責任の追及の手段は「瑕疵修補請求権」・「損害賠償請求」・「契約解除権」の3つです。
請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利を一覧表にまとめました。
注文者の権利 | 内容 |
---|---|
瑕疵修補請求権 | ・相当な期間を定めなければならない ・修補が完了するまで報酬支払いを拒絶できる ・瑕疵が重要でない場合で修補では過分の費用を要するときは修補請求できない(損害賠償請求なら可) |
損害賠償請求 | ・修補が可能であっても損害賠償請求できる ・修補を行なってもなお損傷が残る場合は「修補とともに」損害賠償請求も可 |
契約解除権 | ・目的物に瑕疵があり、契約の目的が達成できないときに行使できる ・目的物がその他工作物の場合は、行使できない |
担保責任の 存続期間 |
普通工作物:引き渡しから5年以内 特殊工作物:引き渡しから5年以内 (瑕疵による損傷があれば損傷から1年以内) |
請負人の担保責任について詳しい解説はこちらです。
売主の担保責任と請負人の担保責任の問題
宅建試験では、売主の担保責任と請負人の担保責任の問題を合わせた問題がよく出題されます。
たとえば、分譲業者Aは建築会社Cにマンションを建築させる請負契約を結びました。Aはこのマンションの303号室をBに売買しましたが、この303号室に瑕疵が発見され、瑕疵により買主Bは402号室に住むという目的を達成できませんでした。
登場人物と状況を整理します。
A:売主・注文者(分譲業者)
B:買主
C:請負人(建築会社)
AB間の契約:売買契約
AC間の契約:請負契約
買主Bの取得した売買の目的物(303号室)に瑕疵があり、目的を達成できていないので、売主Aに対して担保責任として追及できる権利は「契約解除権」と「損害賠償請求権」です。
それに対して分譲業者Aが請負契約の目的物(マンション)に瑕疵があるため請負人である建築会社Cに対して担保責任として追及できる権利は「瑕疵修補請求権」と「損害賠償請求権」です。
ここでの重要ポイントは、買主Bは分譲業者(売主)Aに対して契約解除権を行使できるが、注文者(分譲業者)Aは請負人(建築会社)Cに対して契約解除権を行使することはできない。ということです。
請負契約の目的物が建物その他工作物の場合、瑕疵がいかに重大でも解除権は認められません。
ここが宅建試験でよく問われる論点です。
なので問題文に
分譲業者Aは、請負人Cに対して請負契約の目的物に瑕疵があったことを理由に契約解除をすることができる。
とあれば、正解は「×」です。
逆に
買主Bは、売主Aに対して売買契約の目的物に瑕疵があり売買契約の目的物を達成できなかったとして契約解除をすることができる。
とあれば、正解は「〇」です。
このようにAB間の売買契約の問題なのか、AC間の請負契約の問題なのかで答えが変わってくるので、問題文をよく読みしっかり見極めれるようにしましょう!
≪宅建試験対策≫請負契約の注文者の義務と解除権
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
請負契約の注文者の義務と解除権
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
請負契約の請負人の義務は、「仕事の完成」と仕事の目的物の引き渡しを要するときは「引き渡し」です。
それに対して注文者の義務は、「報酬支払い」です。
この報酬支払義務は、特約がない限り後払いが原則なので、同時履行の関係にあるのは、「目的物の引き渡し」と「報酬支払い」です。
注文者は、請負人が仕事を完成しない間であれば、すでに仕事に着手していたとしても、いつでもその損害を賠償して請負契約を解除することができます。
請負契約とは
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
仕事の完成を注文する側を「注文者」といい、仕事の完成を請け負う側を「請負人」といいます。
注文者の報酬支払いと請負人が仕事を完成することが対価関係に立つという点で、委任とは異なっています。
たとえば、Bは土地を所有しておりその上に建物を建てたいと思っていたので、Aに対して甲建物建築したら報酬を払うと契約しました。
登場人物の整理をします。
A:請負人(甲建物建築を請け負った人)
B:注文者(甲建物建築を注文した人)
AB間の契約:請負契約
このように請負人Aが甲建物の建築する義務を負い、一方注文者Bは報酬を支払う義務を負っています。
つまり、請負は請負人が注文者にある仕事を完成することを約束し、これに対して注文者がその完成した仕事の対価(報酬)を支払うことを約束することによって成立します。
請負契約は諾成契約なので、口約束で成立します。(書類等不要)
注文者の義務
注文者は請負人に対して負う義務は、「報酬支払い義務」です。
ここで注意なのは、注文者が負う「報酬支払い義務」と対価対価関係にあるのは、請負人が負う「仕事の完成義務」です。
なので報酬についての特約がない限り、報酬は後払いが原則です。
だから仕事の目的物が引き渡しを要する場合は、同時履行の関係にあるのは「報酬支払義務」と「目的物引渡し義務」で、「仕事の完成義務」ではありません。
他に報酬支払いと同時履行の関係にあるのは請負人が負う「損害賠償義務」です。
請負人がした仕事に瑕疵があった場合は、注文者は損害賠償請求をすることができます。
※請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利についてはこちら
しかし損害賠償請求について、請負人がその履行を提供しない場合は注文者は当該請負契約にかかる報酬の支払いを拒むことができます。
注文者の解除権
請負契約とは、「注文者のために」仕事の完成も目的として結ばれている契約です。
ですので、請負契約成立後に注文者側の事情で仕事の完成が不要となった場合は、仕事を最後まで完成させることは無意味になります。
なので、注文者は請負人が仕事を完成しない間はいつでも請負契約を解除することができます。
いつでも解除することができるので、請負人がすでに仕事に着手していても解除することができます。
たとえば、BはAに対して乙建物建築を注文しました。
乙建物が9割ほど完成してきましたが、乙建物が不要になった注文者Bは契約解除をしました。
注文者Bが乙建物が不要になれば、請負人Aは残りの1割の仕事をしても無意味なので、この場合の注文者Bは請負契約を解除することができます。
しかし、9割まで仕事をしてきた請負人Aに対して損害を賠償する必要はあります。
ですが、注文者は仕事が完成しない間はすでに仕事に着手していたとしても損害さえ賠償すれば一方的に請負契約を解除することができます。
ここで注意なのは、この解除権は「注文者」に認められたもので「請負人」には認められません。
考えてみれば、仕事を完成させることは無意味になったのでそんな無意味なことをしないでいいように認めている解除権なので、注文者にしか認められないのは納得です。
宅建試験では、この「注文者」を「請負人」にかえてひっかけ問題がよく出題されます。
問題文をよく読み、仕事完成を不要とする解除権があるのは「注文者だけ」と覚えておきましょう!
もちろん注文者が債務不履行等あれば、請負人にも注文者の債務不履行に基づく解除はできます。
まとめると、
- 債務不履行等の解除ができる:請負人と注文者
- 仕事の完成を不要とする解除ができる:注文者のみ
ここは簡単な論点ですが意外とよく出題され、ひっかかりやすいので注意しましょう。
≪宅建試験対策≫請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利 ※一覧表あり※
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
請負人が注文者に対して負う瑕疵担保責任は無過失責任とされます。
請負人に瑕疵担保責任が生じた場合、注文者が有る権利は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権:瑕疵が重要でない場合で修補に過分の費用を要するときは、修補請求はできない。
- 損害賠償請求:修補が可能な場合は、損害賠償請求か瑕疵修補請求かどちらかを選択できる
- 契約解除権:目的物が建物の場合、いかに重大な瑕疵があっても解除権は認められない
担保責任の存続期間は
- 土地の工作物:引き渡しから5年
- 石造・れんが造・金属造などの特殊工作物:引き渡しから10年
請負契約とは
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
仕事の完成を注文する側を「注文者」といい、仕事の完成を請け負う側を「請負人」といいます。
注文者の報酬支払いと請負人が仕事を完成することが対価関係に立つという点で、委任とは異なっています。
たとえば、Bは土地を所有しておりその上に建物を建てたいと思っていたので、Aに対して甲建物建築したら報酬を払うと契約しました。
登場人物の整理をします。
A:請負人(甲建物建築を請け負った人)
B:注文者(甲建物建築を注文した人)
AB間の契約:請負契約
このように請負人Aが甲建物の建築する義務を負い、一方注文者Bは報酬を支払う義務を負っています。
つまり、請負は請負人が注文者にある仕事を完成することを約束し、これに対して注文者がその完成した仕事の対価(報酬)を支払うことを約束することによって成立します。
請負契約は諾成契約なので、口約束で成立します。(書類等不要)
ここで注意なのは、同時履行の関係にあるのは「報酬支払義務」と「目的物引渡し義務」で、「仕事の完成義務」ではありません。
瑕疵担保責任に基づく注文者の権利
瑕疵とは、通常備わっているものが欠損・欠陥していることをいいます。
請負人は注文者に対して、無過失であっても瑕疵担保責任を負います。
請負人に瑕疵担保責任が生じた場合、注文者が有る権利は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権
- 損害賠償請求
- 契約解除権
ひとつずつ解説していきます。
瑕疵修補請求権
第634条
1項 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
請負人がした仕事の目的物に瑕疵がある場合は、注文者はその瑕疵について修理・修補を請求することができます。
たとえば、BがAに対して甲建物建築を注文しました。
甲建物が完成し、Bに引き渡された後に雨漏りが発見されました。
このような場合、注文者Bは瑕疵(雨漏り)を修繕するよう請求することができます。
しかし、瑕疵修補請求権は「相当の期間」を定めて請求しなければなりません。
宅建試験では相当な期間は○○か月か?ということは論点になりません。
なので瑕疵修補請求権は「相当な期間」が必要というワードだけ覚えればOKです!
そして修補請求した場合は、修補が完了するまで報酬の支払いを拒絶することができます。
瑕疵修補請求ができない場合
しかし、瑕疵修補請求ができない場合があります。
それは、「瑕疵が重要でない場合で修補に過分の費用を要するとき」です。
重要ではない瑕疵のために、相当な費用をかけて修補させるのは請負人にとっては過酷すぎるからです。
しかしそれでは注文者に損害があるため、このような場合には瑕疵修補請求ではなく損害賠償請求として対応することになります。
なので、請負契約の目的物たる建物を建て替えざる負えない場合には、注文者は、請負人に対して、建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることができます。(判例)
損害賠償請求権
第634条
2項 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。
「瑕疵の修補に代えて」とは、瑕疵修補請求の代わりに損害賠償請求をするということです。
なので注文者は、修補が可能であっても損害賠償請求をすることができます。
言い換えれば、注文者は請負契約の目的物に瑕疵があった場合「瑕疵修補請求権」を行使するか「損害賠償請求」を行使するか選択できるということです。
しかし、修補請求をしても損傷が残る場合は「修補とともに」損害賠償請求をすることもできます。
なので、請負契約の目的物に瑕疵があった場合に注文者は
- 瑕疵修補請求権のみ
- 損害賠償請求権のみ
- 瑕疵修補請求権+損害賠償請求権
のどれを行使してもよいいうことです。
契約解除権
第635条
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。
注文者は、請負契約の目的物に瑕疵があり「契約の目的を達することができないとき」は契約解除をすることができます。
これは、売買契約の売主の瑕疵担保責任の解除権と同じです。
しかし、請負契約の解除権は条文の但し書が重要です。
それは、「建物その他工作物」にはこの解除権が認められないということです。
請負契約の目的物が「建物その他工作物」の場合、どんなに瑕疵が重大であっても解除権を行使することは出来ません。
建物の場合に、解除権を行使すると取り壊すことになり社会的・経済的に損失が大きく、請負人にとってあまりに過酷になりすぎるからです。
請負人が担保責任を負わない旨の特約をした場合
特約で担保責任を負わない旨を定めることは可能です。
第640条
請負人は、第634条又は第635条の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
注文者と請負人での当事者間で、”担保責任は負わない”と特約することは有効ですが、請負人が瑕疵があることを知りながら告げなかった場合は、請負人は担保責任を免れることは出来ません。
担保責任の存続期間
注文者が上記の権利(瑕疵修補請求権・損害賠償請求権・契約解除権)を行使するには期間の制限があります。
言い換えれば、請負人が担保責任を負わなければいけない期間が決まっているということです。
担保責任の存続期間は下記のとおりです。
期間 | |
---|---|
土地の工作物 (普通工作物) |
引渡しから5年 (特約による伸長は10年まで) |
石造・レンガ造・金属等の 特殊工作物 |
引き渡しから10年 |
この期間内に工作物が瑕疵により滅失・損傷した場合はその損傷から1年以内 |
請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利まとめ
請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利を一覧表にまとめました!
注文者の権利 | 内容 |
---|---|
瑕疵修補請求権 | ・相当な期間を定めなければならない ・修補が完了するまで報酬支払いを拒絶できる ・瑕疵が重要でない場合で修補では過分の費用を要するときは修補請求できない(損害賠償請求なら可) |
損害賠償請求 | ・修補が可能であっても損害賠償請求できる ・修補を行なってもなお損傷が残る場合は「修補とともに」損害賠償請求も可 |
契約解除権 | ・目的物に瑕疵があり、契約の目的が達成できないときに行使できる ・目的物がその他工作物の場合は、行使できない |
担保責任の 存続期間 |
普通工作物:引き渡しから5年以内 特殊工作物:引き渡しから5年以内 (瑕疵による損傷があれば損傷から1年以内) |
≪宅建試験対策≫請負契約の請負人の義務
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
請負契約の請負人の義務
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
請負人が注文者に対して負う義務は下記の2つです。
- 仕事の完成義務:請負人は下請負人に仕事の完成を委ねることも可
- 請負人の担保責任:請負人は注文者に対しその瑕疵の担保責任を負う
請負人が注文者に対して負う瑕疵担保責任は無過失責任とされます。
請負契約とは
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
仕事の完成を注文する側を「注文者」といい、仕事の完成を請け負う側を「請負人」といいます。
注文者の報酬支払いと請負人が仕事を完成することが対価関係に立つという点で、委任とは異なっています。
たとえば、Bは土地を所有しておりその上に建物を建てたいと思っていたので、Aに対して甲建物建築したら報酬を払うと契約しました。
登場人物の整理をします。
A:請負人(甲建物建築を請け負った人)
B:注文者(甲建物建築を注文した人)
AB間の契約:請負契約
このように請負人Aが甲建物の建築する義務を負い、一方注文者Bは報酬を支払う義務を負っています。
つまり、請負は請負人が注文者にある仕事を完成することを約束し、これに対して注文者がその完成した仕事の対価(報酬)を支払うことを約束することによって成立します。
請負契約は諾成契約なので、口約束で成立します。(書類等不要)
ここで注意なのは、同時履行の関係にあるのは「報酬支払義務」と「目的物引渡し義務」で、「仕事の完成義務」ではありません。
請負人の義務
請負人が注文者に対して負う義務は下記の2つです。
- 仕事の完成義務
- 請負人の担保責任
ひとつずつ詳しく解説します。
仕事の完成義務
請負人は、請負契約が成立すると契約に定められ時期に仕事に着手し約定の期間までに完成させる義務を負います。
先ほどの例のような建築契約のように完成物の引き渡しを伴う場合は、注文者に引き渡す義務を負います。
請負人が約定の期日までに仕事を完成しない場合
請負人が負う義務は、「約定した期間内に仕事を完成させる」ことです。
なので、期日内に仕事を完成することができなければ債務不履行になります。
たとえば、BがAに対して4月末までに乙建物完成するよう約定した請負契約を結んだ場合、請負人Aは4月末までに乙建物が完成しなければ債務不履行になります。
なので注文者Bは、債務不履行を理由として契約の解除をすることができます。
もしその期日がまだ到来していなくても、注文者が契約の解除をすることができる場合があります。
それは、請負人の責任で完成が不可能になったときです。
仮に約定した期日がまだ到来していなくても、請負人の責任で完成が不可能になった場合は、注文者は直ちに契約を解除することができます。
請負人は下請負人に仕事の完成を委ねてよい
請負契約の目的は「仕事の完成」です。
なので請負人は必ず自らが完成させる必要はなく、下請負人に仕事完成を委ねることも可能です。
しかし、請負人は下請負人の故意や過失について責任を負う必要があります。
たとえば、Bは4月末までに完成するようにマンションの建築をAに注文しました。
請負人Aは、マンション建築が得意なCにマンション建築を委ねましたが、Cは建築ミスをしてしまいました。
この場合、請負人Aは下請負人Cがした過失(建築ミス)の責任を負わなければなりません。
請負人が下請負人に仕事を完成を委ねることに対して、注文者の同意は必要ありません。
請負の目的は「仕事の完成」なので、それを達成できなければいくら下請負人に過失があっても請負契約を結んだ請負人はその責任を逃れることは出来ません。
請負人の担保責任
請負人は注文者に対し、その瑕疵の担保責任を負わなければなりません。
瑕疵とは、通常備わっているものが欠損・欠陥していることをいいます。
たとえば、BはAに丙建物建築を注文しました。
その後完成しBに引き渡された後になって丙建物に水漏れが生じました。
この場合、請負人Aは水漏れ(瑕疵)について担保責任を負わなければなりません。
この場合の瑕疵担保責任は、無過失責任です。
なので請負人はその瑕疵に過失がなくても責任を負うことを原則免れることは出来ません。
しかし、特約で担保責任を負わない旨を定めることは可能です。
第640条
請負人は、第634条又は第635条の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
注文者と請負人での当事者間で、”担保責任は負わない”と特約することは有効ですが、請負人が瑕疵があることを知りながら告げなかった場合は、請負人は担保責任を免れることは出来ません。
注文者の指図によって生じた瑕疵の場合
仕事の目的物に瑕疵があった場合でも、その瑕疵が注文者の指図によって生じた場合は請負人は担保責任を負いません。
第636条
前二条の規定は、仕事の目的物の瑕疵が注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じたときは、適用しない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。
≪宅建試験対策≫売主の担保責任の重要要点まとめ
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
- 売主の担保責任の重要論点まとめ
- 売主の担保責任
- 売主の瑕疵担保責任
売主の担保責任の重要論点まとめ
「売主の担保責任」とは、売買によって買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主が負う無過失責任のことをいいます。
「瑕疵担保責任」とは、売買契約の目的に隠れた物理的欠損や法律的欠損があった場合に、売主はその欠損について故意・過失がなくても保証しなければならない責任のことをいいます。
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≪宅建試験対策≫弁済者の代位
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
- 弁済者の代理
- 弁済者の代位とは
- 弁済者の法定代位
- 弁済者の任意代位
- 弁済者の代位とは
弁済者の代理
弁済は原則として、第三者でもすることができます。
「弁済者の代位」とは、第三者が債務者のために弁済をすると、その第三者は債権者の地位に代位することができるということです。
簡単に言うと、第三者は債務者に対して求償権を行使し、弁済の返還を求めることができます。
弁済者の代位には2つのパターンがあります。
- 法定代位:弁済するについて正当な利益を有する者が弁済した場合
- 任意代位:正当な利益を有しない者が弁済した場合
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≪宅建試験対策≫強迫
「意思表示」の宅建本試験に出題される頻度は、毎年です。
意思表示の問題を解くうえで大切なのは、主語を読み間違えないことです。
状況をイメージし、だれがどのような状態なのかを理解しなければなかなか正解に結びつきません。
ややこしい項目ですが、他の項目にも絡んできます。
宅建試験合格を目指すにあたっては、優先的に勉強すべき項目です。
- 強迫
- 瑕疵のある意思表示
- 強迫による意思表示
- 強迫の第三者
- 取消し後の第三者
- 第三者の詐欺
- 強迫の第三者
強迫
「強迫」とは、他人に害悪を加えることを示して恐怖心を生じさせる違法な行為のことをいいます。
強迫による意思表示は、取り消すことができます。
強迫による取消しは、本人も被害者で保護すべきなので取消し前の善意の第三者にも対抗することができます。
第三者から強迫を受けてなされた契約でも、相手方が善意・悪意関係なく取り消すことができます。
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≪宅建試験対策≫詐欺
「意思表示」の宅建本試験に出題される頻度は、毎年です。
意思表示の問題を解くうえで大切なのは、主語を読み間違えないことです。
状況をイメージし、だれがどのような状態なのかを理解しなければなかなか正解に結びつきません。
ややこしい項目ですが、他の項目にも絡んできます。
宅建試験合格を目指すにあたっては、優先的に勉強すべき項目です。
- 詐欺
- 瑕疵のある意思表示
- 詐欺による意思表示
- 詐欺の第三者
- 取消し後の第三者
- 第三者の詐欺
- 詐欺の第三者
詐欺
「詐欺」とは、人をだまして錯誤に陥れる行為のことをいいます。
詐欺による意思表示は、取り消すことができます。
しかし、詐欺による取消しは、取消し前の善意の第三者に対抗することは出来ません。
第三者からの詐欺を受けてした契約は、相手方が悪意のときのみ取り消すことができます。
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≪宅建試験対策≫錯誤
「意思表示」の宅建本試験に出題される頻度は、毎年です。
意思表示の問題を解くうえで大切なのは、主語を読み間違えないことです。
状況をイメージし、だれがどのような状態なのかを理解しなければなかなか正解に結びつきません。
ややこしい項目ですが、他の項目にも絡んできます。
宅建試験合格を目指すにあたっては、優先的に勉強すべき項目です。
- 錯誤
- 意思の不存在
- 錯誤
- 錯誤による無効の成立要件
- 錯誤による無効の例外
- 錯誤による無効の成立要件
錯誤
「錯誤」とは、勘違いによる意思表示のことです。
錯誤は表意者(本人)の勘違いなので、基本的には表意者(本人)を保護します。
なので錯誤による意思表示は無効です。
この錯誤による無効は悪意はもちろん善意の第三者にも対抗できます。
錯誤による無効を主張する際には下記の2つの要件を満たしていることが条件です。
- 重過失がないこと
- 要素の錯誤があること
しかし動機の錯誤の場合は、相手方に表示(黙示的でも可)しなければ無効を主張することは出来ません。
錯誤による無効は、表意者(本人)保護が目的のため無効の主張は表意者(本人)のみしか主張することができません。
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