≪宅建試験対策≫保証債務
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
保証債務
「保証」とは主たる債務者が債務を履行できない(借りたお金を弁済できない等)場合において、債務者の代わりに第三者(保証人)が債務の履行の責任(借りたお金の弁済等)を負うことをいいます。
「保証債務」とは、保証契約によって発生する保証人が負う債務をいいます。
保証債務の内容は、主たる債務のほか、主たる債務に関する利息・違約金、損害賠償などの主たる債務に関するものすべてを含み、契約解除による原状回復義務も含まれます。
保証債務には下記の二つの性質があります。
- 付従性:主たる債務が有効に存在しなければ従たる債務も存在しない
- 補充性:主たる債務が履行可能である以上、保証人は責任を負う必要がない
補充性があるということは、保証人に「催告の抗弁権」と「検索の抗弁権」があるということです。
そして、保証債務が主たる債務より重たくなることはありません。
また、保証人は主たる債務者が行使できる下記の権利を行使することができます。
- 同時履行の抗弁権
- 時効の援用
- 相殺権
保証債務とは
「保証」とは主たる債務者が債務を履行できない(借りたお金を弁済できない等)場合において、債務者の代わりに第三者(保証人)が債務の履行の責任(借りたお金の弁済等)を負うことをいいます。
保証債務は、債権者と保証人の保証契約によって発生します。
保証人が負う債務を「保証債務」といいます。
逆に保証委契約の主たる債務者が負っている債務を「主たる債務」といいます。
保証債務の範囲
保証債務の内容は、主たる債務の内容と保証契約の内容で決まります。
保証債務の範囲は、主たる債務、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償など主たる債務に従たるすべてのものを含みます。
抵当権は利息を最後の2年分と制限がありましたが、保証債務には制限がありません。
しかし保証債務は主たる債務者の内容より重くなることはありません。
なので民法では、保証債務についてのみ、違約金または損害賠償の額を契約で定めることができます。
保証債務の範囲は、契約解除による原状回復義務にも及びます。(判例)
たとえば、売買による売主の保証人は、売主の債務不履行により契約解除された場合の代金返還義務(原状回復義務)についても責任を負います。
しかし、保証債務は契約当初の額から減ることはあっても、増額されることはありません。
なぜなら、保証債務の額や内容を承諾して保証契約を結んでいる保証人にしたら減ることは負担の軽減になりますが、増えることは負担が重くなり不当だからです。
保証債務の付従性
「付従性」とは、主たる債務が有効に存在しなければ従たる保証債務も存在しないということです。
すなわち、主たる契約がなんらかの理由(詐欺や強迫等)で取り消された場合、保証契約も無効となります。
たとえばAを売主、Bを買主として甲土地の売買契約をし、AはBの代金支払債務の保証としてCを保証人としました。
しかし、AB間の売買契約がAの詐欺により締結されたもので取り消されました。
この場合、主たる債務である代金支払債務が消滅するため、AC間の保証契約も無効となります。
ただし、債務者Bが制限行為能力者で保証人Cがそれを知りつつ保証人になった場合には、AB間の契約が債務者Bの契約が制限行為能力を理由に取り消されても、Cは責任を負わなければなりません。
民法449条
行為能力の制限によって取り消すことができる債務を保証した者は、保証契約の時においてその取消しの原因を知っていたときは、主たる債務の不履行の場合又はその債務の取消しの場合においてこれと同一の目的を有する独立の債務を負担したものと推定される。
保証人が行使できる主たる債務者の権利
保証債務が主たる債務より重たくなることはなく、重い場合は主たる債務を限度に縮減されます。
また、保証人は主たる債務者が行使できる下記の権利を行使することができます。
- 同時履行の抗弁権
- 時効の援用
- 相殺権
同時履行の抗弁権
たとえば、Aが売主でBを買主とする甲土地の売買契約を締結し、Bの代金支払債務を保証するためにAは、Cを保証人としました。
Aの有する甲土地の引渡し債務とBの有する代金支払債務は同時履行の関係にあります。
債権者Bは「甲土地をBに引き渡さないなら、代金は支払わない!」と主張することができ、この主張する権利を「同時履行の抗弁権」といいます。
そしてこの同時履行の抗弁権は、保証人Cにも認められています。
時効援用
主たる債務について時効が完成しているにも、かかわらず債権者が時効の利益を放棄していても、保証人は時効を援用して保証契約を消滅させることができます。
たとえば、AがBに対する債権が時効完成しているにも関わらず、債務者Bが時効援用しようとしません。
Bが時効援用しないと、主たる債務は残ったままなのでCの保証債務も残ってしまいます。
この場合、保証人Cは時効援用し保証債務を消滅させることができます。
相殺権
保証人は主たる債務者の有する反対債権をもって、相殺を援用することができます。
たとえば、AがBに対して有する100万円の債権を保証している保証人Cは、BがAに対して有する100万円の反対債権を相殺を援用して、保証債務の消滅させることができます。
もちろん、Bが有する反対債権が債務に満たない場合(上の図だと100万円以下)は、保証債務は消滅せず、相殺援用した残りの額で保証債務は残存します。
保証債務に影響を及ぼす主たる債務の事由
原則、保証人について生じた事由は主たる債務に影響は及びません。
しかし例外があり、債務を消滅させる行為(履行・相殺など)は主たる債務に影響を及ぼします。
主たる債務について時効の中断事由(履行の請求など)や期間延長が生じた場合は、保証債務にも影響を及ぼします。
保証債務の補充性
保証債務は、主たる債務が履行できない場合を補うために履行される債務にすぎません。
なので、主たる債務が履行可能であれば保証人が責任を負う必要はないので保証人に下記の2つを認めています。
- 催告の抗弁権
- 検索の抗弁権
しかし、同じ保証の1種である連帯保証人には、「催告の抗弁権」も「検索の抗弁権」も認められていません。
連帯保証と保証の違いについてはこちらで詳しく解説しています→連帯保証と普通保証
催告の抗弁権
保証人は、債権者から債務の履行の請求を受けた場合は、「まず主たる債務者に請求して!」と主張することができます。
この主張することができる権利を「催告の抗弁権」といいます。
ただし、主たる債務者が「破産手続き開始の決定を受けた」場合と主たる債務者が「行方不明」になっている場合は、催告の抗弁権は主張することができません。
検索の抗弁権
保証人が債権者から請求を受けた場合に、「まず主たる債務者の財産に強制執行をかけて!」と主張することのできる権利を「検索の抗弁権」といいます。
保証人が検索の抗弁権を主張するには下記の2点を立証する必要があります。
- 主たる債務者に弁済の資力があること
- その執行が容易であること
保証人が上記の2つを立証したときは、債権者は主たる債務者に催告した後でも、まず主たる債務者の財産について執行しなければなりません。
立証要件の「その執行が容易である」とは、金銭や有価証券のことをいいます。
不動産は一般的には執行容易な財産にはあたりません(判例)