≪宅建試験対策≫履行遅滞とは?履行遅滞の起算日と消滅時効との違いついてのわかりやすく解説
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
履行遅滞とは?履行遅滞の起算日についてのわかりやすいまとめ
「債務不履行」とは、故意または過失により債務者が債務を約束通り履行しないことです。
「履行遅滞」とは、債務者が債務の履行が可能なのに履行期を過ぎても履行しないことをいいます。
「履行遅滞」は、債務不履行の一種です。
宅建ではいつから履行遅滞になるか、という論点が重要です。
履行遅滞となる時期は下記の3パターンに分かれます。
- 確定期日付き債務:原則として期限の経過したとき
- 不確定期日付き債務:期限が到来し、債務者がそれを知ったとき
- 期限の定めなき債務:原則として、請求(催告)があったとき
履行遅滞とは?
「履行遅滞」とは、債務者が債務の履行が可能なのに履行期を過ぎても履行しないことをいいます。
たとえば、AがBに対して甲建物を売却しました。
Bは甲建物代金を支払い、甲建物引渡しを2月14日としました。
しかしAは甲建物引渡し3月14日だと勘違いして、2月14日に甲建物を引渡ししませんでした。
Aは、代金債権者であり、甲建物引渡債務を負っています。
Bは、甲建物を引き渡してもらう権利をもち、代金支払債務を負っています。
売主Aは甲建物引き渡しの債務を負っていて、引渡しの期限を過ぎたにもかかわらず買主Bに対して引渡していません。
これは売主Aの「履行遅滞」であり、債務不履行の一種です。
履行遅滞が発生する要件
履行遅滞の責任が問われる要件としては下記の4つです。
- 履行期が到来している
- 履行が可能な状態にあるのに履行しない
- 履行しないことに債務者に責めに帰すべき事由に基づく故意または過失がある
- 同時履行の抗弁権などがなく履行しないことに違法がある
上の例で言うと
- 引渡し期限が過ぎている
- 甲建物が存在している(なんらかの理由で甲建物が滅失していたら「危険負担」か「履行不能」になる)
- Aは引渡し日を勘違いしていただけなので、甲建物を引き渡さないことに対してAに過失または故意がある
- Aには同時履行の抗弁権がない
ので、AがBに対して負う債務は「履行遅滞」となります。
3番の「債務者Aの責めに帰すべき事由に基づく過失または故意がない場合」とは、引渡しの当日に災害があり、どうしても引き渡せなかった場合などAには引渡し出来なかった責任がないことを言います。
引渡し日を勘違いしていたのはAの過失なので、「債権者Aに責めに帰すべき事由に基づく過失または故意がある」ことになります。
4番の「同時履行の抗弁権がない」とは、AはBに甲建物代金を受領しています。
代金を受領していなかったら、代金支払いと引渡しは同時履行の関係にありますので、引渡し期限が過ぎてても「代金を受け取らないと引き渡さない」と主張することができ、引渡さないことに関して違法ではありません。
しかしAはBから代金を受領済みなので、同時履行の抗弁権を主張することはできず、違法に引き渡していないということになります。
同時履行の抗弁権について詳しく解説しています。→同時履行の抗弁権とは?
履行遅滞の効果
履行遅滞となった際の債権者は、下記を債務者に求めることができます。
- 履行の請求
- 契約解除
- 損害賠償請求
「契約解除」は相当な期間を定めて催告し、その期間中に履行がなされなければ契約解除を求めることができます。
Bは履行遅滞になったらすぐに契約解除をできるわけではないので注意してください。
相当な期間とは、契約内容によって判断されます。
宅建試験では、相当な期間は○○年か?は論点になりませんので催告の際は相当な期間を定める、ということだけ覚えておいてください。
しかし、「その日に履行されなければ意味がない」ような債務の履行遅滞は催告なく契約解除することができます。
たとえば、クリスマスケーキを予約して25日に引渡すという契約を結んだ時に、引渡し債務に履行遅滞があり25日に履行できない。ということになれば催告なく契約解除することができます。
いつから履行遅滞になるのか?
履行遅滞の1番の論点は、いつから履行遅滞になるのかという履行遅滞の起算日についてです。
履行遅滞となる時期は下記の3パターンに分かれます。
- 確定期日付き債務:原則として期限の経過したとき
- 不確定期日付き債務:期限が到来し、債務者がそれを知ったとき
- 期限の定めなき債務:原則として、請求(催告)があったとき
確定期日付き債務は期限の経過したときから履行遅滞になる
たとえば、土地の売買契約を2月1日締結し、同日に売主は土地を引き渡した。
代金支払を2月14日に定めた場合、買主が2月14日までに代金を支払わなければ、買主の代金支払債務は履行遅滞になります。
不確定期日付き債務は期限が到来し債務者がそれを知ったときから履行遅滞になる
「不確定期日」とは、到来することは確実だがいつ到来するか不明な期日を言います。
たとえば、AがBから建物を買う際にAが「父が死亡したら代金を払う」と定めて建物の引渡しを受けた。
この場合代金支払債務者である「Aが父の死亡を知ったとき」から履行遅滞となります。
期限の定めなき債務は債権者が請求したときから履行遅滞になる
たとえば、AはBに対して本を貸して、「返すのはいつでもいいよ」と言って本を引渡した。
この場合、Aが「本を返して!」と請求したときからBは履行遅滞となります。
債務が金銭消費貸借債務なら催告が必要
たとえば、AはBに対して「弁済はそのうちに」と100万円を貸しました。
この場合、Bの100万円弁済債務が履行遅滞になるときは、Aが「100万円返して!」と請求したときではありません。
債権者Aが相当の期間を定めて催告し、その期間が経過しても履行されなかった(弁済されなかった)ときから、履行遅滞になります。
期間を定めずに催告した場合は、客観的に相当と考えられる期間が経過したときに履行遅滞になります。
履行遅滞と消滅時効の起算日の違い
「履行遅滞」は、履行可能な状態にあるのに履行期を過ぎても履行しないことを要件にしています。
「消滅時効」は、権利を行使することができる時から一定期間、権利を行使しないことを要件にしています。
なので、起算日に違いがあります。
違いがわかりやすいように一覧表にまとめました!
履行遅滞 | 消滅時効 | |
---|---|---|
確定期日あり | 期限が到来したとき | 期限が到来したとき |
不確定期日 | 期限が到来し 債務者がそれを知ったとき |
期限が到来したとき |
期限の定めがない | 請求(催告)があったとき | 債権が成立したとき |