≪宅建試験対策≫民法上の"手付"とは?
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
民法上の手付とは?
「手付」とは、契約の締結にあたり、当事者の一方から相手方に対し交付される金銭のことをいいます。
手付の種類は下記の3つに大きく分けれれます。
- 証約手付:契約が締結されたことを証拠として交付される手付
- 違約手付:違約罰として交付される手付
- 解約手付:契約の解除権を留保するために交付される手付
宅建試験で手付という言葉は原則、「解約手付」を指します。
(解約)手付による契約解除は、相手方が履行に着手する前に行う必要があります。
手付とは?
「手付」とは、契約の締結にあたり、当事者の一方から相手方に対し交付される金銭のことをいいます。
契約の締結にあたり交付される金銭には、「申込証拠金」や「内金」「手付」などと呼ばれますが、それは名称によって区別されるかわけではなく性質よって区別されます。
「契約の締結にあたり交付される金銭=手付」と覚えると宅建業法で痛い目みるので契約締結で交付される金銭についてざっと触れておきます。
- 申込証拠金:契約前に購入意思の証として不動産会社に支払う金銭
- 内金:売買代金等の一部を支払うこと
- 手付:特約がなければ、解約手付
宅建業法では、手付が論点となる問題がたくさん出てきます。
民法で学ぶ手付は、宅建業法で論点を理解するために基本的な知識として勉強しましょう。
手付の種類
手付の種類は下記の3つに大きく分けれれます。
- 証約手付:契約が締結されたことを証拠として交付される手付
- 違約手付:違約罰として交付される手付
- 解約手付:契約の解除権を留保するために交付される手付
特約がなければ解約手付と推定されるため、宅建試験で出題される手付も原則、解約手付です。
手付を交付した時点でその契約を締結する意思がある、と意思表示したことになります。
ですので、手付は、証約手付という性質をもともと持っていて特約がなければプラスで解約手付の性質をあわせ持つということです。
なので、問題文で「特約にかかわらず常に解約手付の性質を有する」という記述は誤りです。
解約手付
「解約手付」とは、手付額だけの損失を負担することにより、相手方に債務不履行がなくても契約を解除できる旨を定めた手付で、交付されると契約当事者に解約権が留保されます。
一般的に手付は買主が売主に対して交付するものです。
たとえば、売主Aは買主Bと1000万円の建物の売買契約を結びました。
買主Bは手付金200万円を売主Aに交付しました。
一度締結した契約を一方的な理由で解約するためには、相手方の債務不履行がある必要があります。
しかし解約手付を交付すれば、債務不履行の有無を問わず契約解除をすることができます。
解約手付による契約解除
さきほどの例で買主Bが売買契約締結後に「やっぱりこの建物ほしくない」っといって契約解除する場合は、交付した手付金を放棄して契約解除することができます。
売主Aが売買契約締結後に「やっぱりこの建物は売りたくない」っといって契約解除をする場合は、すでに受領した手付の倍額を買主に返すことによって契約解除することができます。
売主が手付の倍返しで契約解除をする場合は、意思表示だけでは契約解除することはできません。
実際に売主が手付の倍額を支払うことによって、契約解除の効果が発生します。
解約手付の制限
手付の放棄・倍返しによる契約の解除は、相手方が履行に着手するまでにしなければなりません。
契約の相手方が履行に着手した段階で、契約解除してしまうと、履行した部分が無駄になってしまい、相手方に損害が発生してしまう可能性があります。
その観点で履行に着手したら手付による契約解除ができないだけなので、逆に自分が履行に着手しているだけなら手付による契約解除をすることができます。
どのような行為が履行に着手しているかという例を一覧表でまとめました。
履行に着手していると認められる行為 | |
---|---|
売主 | *目的物が既存の建物なら登記変更 *目的物が建築前なら建築工事を始める など |
買主 | *引っ越しするために家の退去・引っ越し業者との契約 *代金の用意をして、売主に物の引き渡しの催告する など |
手付による契約解除による損害賠償請求
手付により契約解除した場合、当事者に解除に伴う損害が生じたとしても、その損害賠償は請求することはできません。
解約手付はもともと「履行に着手する前に契約解除する場合はこの金額の範囲内で解決しましょう」という趣旨で手付契約を結んでいます。
なので、手付による契約解除をした場合は契約解除による損害賠償はすることはできません。
もちろん、債務不履行による契約解除は損害賠償請求することができます。
手付金の返還
手付金を交付した契約で債務不履行や合意解除があり契約が解除された場合は、売主に交付された手付は買主に返還されます。
これは債務不履行による契約の解除には原状回復義務があるからです。
契約の解除の原状回復義務について詳しい解説はこちらです→契約解除の効果
手付による契約解除と債務不履行による契約解除では、一方的な意思表示という点では同じですが、契約解除する原因が違います。
手付による契約解除は「契約解除する場合はこの金額の範囲内で解決しましょう」という合意のもとで契約解除されます。
なので、相手方が履行に着手後は新たな損失を生むので手付による契約解除はすることはできません。
しかし、債務不履行による契約解除は「債務不履行という原因」で契約解除されます。
なので、相手方が履行に着手したかどうかは関係なく契約解除することができます