宅建試験をわかりやすく解説!*権利関係法令(民法)*~重要要点まとめ~
宅建試験の問題数は50問です。
全50問中、権利関係法令(民法)は毎年14問程度出題されています。
宅建試験の合格点は毎年37点前後です。
宅建試験をわかりやすく解説!*権利関係法令(民法)*~重要要点まとめ~
正直に、民法は難しく、判例も多く出題されるため勉強しても点数に結びつけにくい教科です。
しかし宅建合格を目指すとなると民法では14問中8問は得点しておきたいです。
逆をいえば、民法の正解率は50%をとれていたら宅建合格する可能性が上がります。
民法で50%の正解率を得るには、重要要点だけは確実に押さえておく必要があります。
宅建試験で判例まですべて網羅するのは不可能に近いので、まず重要要点をしっかり勉強して過去問など問題を解いていく中で、知識の肉付けをしていきましょう!
民法「総則」
「総則」は毎年2問出題されています。
民法全体でいえば、正解しやすいので得点しておきたい範囲です。
ここでの重要項目は「意思表示」と「代理制度」です。
制限行為能力者
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「制限行為能力者」とは、財産上の行為を単独で完全にできる行為能力について一定の範囲で制限を受ける者をいいます。
制限行為能力者は、各能力の範囲で下記の4つに分けられます。
- 未成年:満20歳未満の者
- 成年被後見人:精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者
- 被保佐人:精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者
- 被補助人:精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者
制限行為能力者を保護するために、保護者がつけられています。
- 未成年:法定代理人(親権者・未成年後見人)
- 成年被後見人:成年後見人(家庭裁判所から選任される)
- 被保佐人:保佐人(家庭裁判所から選任される)
- 被補助人:補助人(家庭裁判所からの選任される)
制限行為能力者がした法律行為について、保護者に認められる4つの権利を一覧表にまとめました。
権利 | 内容 | 権者 |
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同意権 | 保護者の同意を得て行った制限行為能力者の法律行為は 確定的に有効になる |
*法定代理人(親権者・未成年後見人) (民法13条1項に掲げえる特定の行為のみ) (民法13条1項に掲げえる特定の行為のみ) |
代理権 | 保護者は制限行為能力者に代わって 法律行為をすることができる |
*法定代理人(親権者・未成年後見人) (家庭裁判所が定める特定の行為のみ) (家庭裁判所が定める特定の行為のみ) |
取消権 | 制限行為能力者が単独で行った法律行為は 原則として取り消すことができる |
*法定代理人(親権者・未成年後見人)と本人 *成年被後見人と本人 *保佐人と本人 *補助人と本人 |
追認権 | 制限行為能力者が行った法律行為を 後から有効な法律行為にすることができる |
*法定代理人(親権者・未成年後見人)と能力者本人 *成年被後見人と能力者本人 *保佐人と能力者本人 *補助人と能力者本人 |
「能力者本人」とは、法律行為時は制限行為能力者であったが、その後能力者となった本人(元制限行為能力者)のことです。
「制限行為能力者」について詳しい解説はこちらです↓
意思表示
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意志表示とは、自分の「思い」を外部に「表示」する行為をいいます。
たとえば、土地の売買契約に際して、売主が「土地を売ります」と申込をする、買主が「土地を買います」と承諾をする行為のことです。
契約などの法律行為は、「申込・承諾」の意思表示だけで成立し、権利と義務が発生します。
なので、法律行為の成立やその効果を発生させるには当事者の内心の意思とその表示が一致していることが必要です。
なので、民法では意思と表示が一致していない場合(意思の不存在)と意思決定に他人の不当な違法行為が加わった場合(瑕疵のある意思表示)において意思表示の効果を制限しています。
民法で定める意思の不存在は下記の3つです。
- 心裡留保:意思表示をした者が真意とは異なることを理解しながら行った意思表示
- 通謀虚偽表示:誰かとほかの者と通じて行った真意でない意思表示
- 錯誤:勘違いによる意思表示
民法で定める瑕疵のある意思表示は下記の2つです。
- 詐欺:人をだまして錯誤に陥れる行為のこと
- 強迫:他人に害悪を加えることを示して恐怖心を生じさせる違法な行為
「意思表示」について詳しい解説はこちらです↓
代理制度
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「代理制度」とは、代理人が本人のためにすることを示して相手方に意思表示をし、また意思表示を受けることによって、直接本人に効力を生じさせる制度です。
「復代理」とは、代理人が自らの代理権の範囲内で特定の者を選任し、その権限内の行為の全部または一部を行わせることをいいます。
「表見代理」とは、本来は無権代理行為だが、第三者から見て有効な代理権があるような外観があり、本人にも責任がある場合に、相手方を保護するために本人に効果を帰属させる制度です。
表見代理が成立したら、その無権代理行為は有効な代理行為になります。
表見代理が成立するには、相手方が善意無過失である必要があります。
代理行為をなした者が代理権を有しなかった場合を「無権代理」といいます。
代理権がない状態での契約なので、無権代理での行為は原則本人に効果は及びません。
無権代理行為の「本人」が持つ権利は2つです。
*「無権代理人が無断でした行為は認めない!」という追認拒絶権
*「無権代理人がした行為を認める!」という追認権
無権代理行為の相手方を保護するために2つの権利があります。
- 催告権:善意・悪意を問わず本人に追認するかどうか解答を求める。
- 取消権:相手方が善意の場合のみ、本人が追認する前までなら契約自体を取消すことができる。
無権代理行為の本人と無権代理人の地位が相続などで混同することがあります。
*単独相続:無権代理行為は当然に有効(追認拒絶は信義則に反する)
*共同相続:無権代理行為は相続人全員による追認権の行使により有効
「代理制度」について詳しい解説はこちらです↓
条件および期限
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条件
「停止条件」とは、ある条件が成就することより、法律行為の効力が発生するという条件のことです。
「解除条件」とは、ある条件が成就することにより、法律行為の効力が消滅するという条件のことです。
条件付き法律行為の各当事者は、条件の成否が未定の間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することは出来ません。
条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる。
「条件」について詳しい解説はこちらです↓
期限
到来する時が確定しているものを「確定期限」といいます。
それに対し、到来することは決まっているがいつ到来するかが不確定なものを「不確定期日」といいます。
「期限の利益」とは、期限がまだ到来していないことによって当事者が受ける利益のことをいいます。
「期限」について詳しい解説はこちらです↓
時効
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「時効」とは、ある事実状態が一定期間継続した場合、真実の権利関係にかかわらず、その継続した事実を尊重して、権利の取得または消滅という効果を発生させる制度のことです。
「取得時効」とは、一定の事実状態が一定期間継続することにより、財産権が取得される時効のことをいいます。
「消滅時効」とは、一定の事実状態(権利不行使の状態)が一定期間継続することにより、権利が消滅する時効をいいます。
「時効の中断」とは、時効の進行中に一定の事実が生じた場合、それまでの時効期間がすべてゼロになることをいいます。
「時効の援用」とは、時効が完成した際に時効によって利益を受ける者が時効の利益を受けることを主張することです。
「時効」について詳しい解説はこちらです↓
物権
「物権」は毎年2問出題されています。
物権は民法の中でも最も難しいです。
効率よく宅建合格を狙うなら「抵当権」に絞って勉強するのもアリです。
物権とは?
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「物権」とは、一定物を直接・排他的に支配できる権利のことをいいます。
物権と対比されるのが「債権」です。
債権とは、特定の人に一定の行為や給付を請求する権利です。
物権と債権の違いについては一覧表にまとめました。
物権 | 債権 | |
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権利の違い | 物を支配する権利 | 債務者に行動を請求する権利 |
絶対性と相対性 | 絶対的権利 (登記すれば全ての人に主張することができる) |
相対的権利 (債務者に対してのみ主張できる) |
排他性 | あり (同じ物について他人が同一内容の支配ができない) |
なし (同じ物の上に同じ内容の債権が複数存在することができる) |
「物権法定主義」とは、法律の認めない新しい種類の物権をつくったり、法律の内容と異なる内容を物権に与えることは出来ない。ということです。
不動産に関する物権は、登記しなければ対抗することはできません。
「物権とは?」について詳しい解説はこちらです↓
民法上の所有権
「所有権」とは、法令の範囲内で、物を全面的・かつ自由に使用・収益・処分することができる物権です。
隣の土地所有者との関係と、利害を調整するため民法に規定されてもののうち宅建試験に出そうなものは下記のとおりです。
- 隣地の使用請求
- 公道に至るための他の土地の通行権
- 自然水流に対する妨害
- 境界標の設置と保存費用
- 竹木の枝の切除及び根の切り取り
- 境界線付近の建築制限
所有権を論点として問題が出題されることはほぼないです。
試験範囲内なので解説しますが、こんな民法上の規定もあるんだな…程度に学習する程度で大丈夫です!
「民法上の所有権」について詳しい解説はこちらです↓
物権変動
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「物権変動」とは、物権が契約のその他の原因によって、物権が「発生」したり、「変更」したり「消滅」したりすることをいいます。
物権変動の効力は、当事者間は契約成立時に生じます。
しかし、物権変動の効力の発生を第三者に対抗する場合は、登記をしなければ第三者に対抗することはできません。
詐欺や強迫により契約が取り消された場合、取り消しの時期によって第三者に対する対抗要件が変わります。
一覧表にまとめました。
取消前 | 取消後 | |
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詐欺 | 第三者が善意なら:第三者の勝ち 第三者が悪意なら:第三者の負け |
先に登記を備えたほうが勝ち |
強迫 | 第三者が善意でも悪意でも、第三者の負け |
先に登記を備えたほうが勝ち |
契約が債務不履行により解除された場合、善意悪意を問わず登記を備えていたほうが勝ちになります。
不動産を時効取得した者は、取得したのが時効完成前なのか完成後なのかで第三者に対する対抗要件が変わります。
一覧表にまとめました。
完成前 | 完成後 | |
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時効 | 第三者は所有権を主張できない | 先に登記を備えたほうが勝ち |
「物権変動」について詳しい解説はこちら↓
共有
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「共有」とは、数人の者がそれぞれ共同で持ち分を有して、ひとつの物を所有している権利形態です。
各共有者の有する権利を「持分権」といいます。
各共有者は持分権に応じて処分(放棄・譲渡・担保権の設定など)をすることができます。
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができます。
共有物の保存行為は、各共有者が単独ですることができます。
共有物の管理行為は、各共有者の持分価格の過半数の賛成で行います。
共有物の変更行為は、共有者全員の同意が必要です。
原則として各共有者はいつでも自由に共有物の分割を請求できるとしています。
しかし、特約によって分割しない旨を定めることができます。
この特約(共有物不分割特約)の期限は5年です。
「共有」について詳しい解説はこちらです↓
用益物権
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「用益物権」とは、他人の土地をある目的で利用(利用収益)することのできる物権です。
用益物権には、「地上権」「地役権」「永小作権」「入会権」の4種類があります。
「地上権」とは、他人の土地において、建物をその他工作物、または竹木を所有するためにその土地を使用する権利をいいます。
「地役権」とは、自己の土地の便益のために、他人の土地を利用するための権利です。
「用益物権」について詳しい解説はこちらです↓
占有
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「占有権」とは、自己のためにする意思で物を所持することによって取得する物権です。
「占有訴権」とは、占有を害されたり、奪われたりした場合に、返還請求や賠償金の請求ができる権利をいいます。
占有訴権は下記の3種類の分けれれます。
- 占有保持の訴え
- 占有保全の訴え
- 占有回収の訴え
「占有」について詳しい解説はこちらです↓
抵当権以外の担保物権
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「担保物権」とは、ある債権の弁済を確保するためにあらかじめ特定の物を債権の担保として提供し弁済を保証する権利のことです。
担保物権には、共通する4つの性質があります。
- 付従性(ふじゅうせい)
- 随伴性(ずいはんせい)
- 不可分性(ふかぶんせい)
- 物上代位性(ぶつじょうだいいせい)
担保物権は当事者の合意によって成立する「約定担保物権」と法律上当然に成立する「法定担保物権」の2種類があります。
- 約定担保物権:質権・抵当権
- 法定担保物権:留置権・先取特権
「抵当権以外の担保物権」について詳しい解説はこちらです↓
抵当権
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「抵当権」とは、債権者が、債務者または第三者(物上保証人)が担保に供した物について、占有を移転しないで設定者にその使用・収益を許し、債務者が弁済しないときには、その目的物を競売して、優先的に弁済を受ける権利をいいます。
抵当権と転抵当抵当権の効力は、その目的となっている不動産に「付加してこれと一体となったもの」に及ぶとされています。
「抵当権の侵害」とは、抵当権者が目的物の価値の減少・価値の減少の可能性により、被担保債権を回収できなるなることをいいます。
抵当権は、ひとつの目的物に対して、複数設定することができます。
抵当権の実行の最大の論点は、一括競売と法定地上権です。
宅建試験で学ぶべき抵当権の目的物の第三取得者やその他の第三者を保護するための規定は、「代価弁済」と「抵当権消滅請求」の2つです。
抵当権と賃借権の優劣は、登記の前後によって決まります。
根抵当権とは、「一定の範囲に属する」不特定の債権を極度額の限度で担保するために設定される抵当権の一種です。
「抵当権」について詳しい解説はこちらです↓
債権
「債権」は毎年4~5問出題されています。
債権は範囲が広いため、いくら対策しても見たことない問題や難易度も様々です。
あまり手を広げず出題確率が高い、「人的担保」「不法行為」「売主の担保責任」「賃貸借」「債務不履行」を優先的に押さえていきましょう!
人的担保
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「連帯債務」とは、数人の債務者が同一内容の債務を各自独立して負担し、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時もしくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部または一部の履行を請求することができる債務関係のことです。
しかし、多数の当事者がいる債権・債務の原則は、「分割債権・分割債務」が原則なので、「連帯債務」は例外です。
連帯債務は原則は相対的に効力を及ぼします。
しかし例外的に7つの事由は絶対的に効力を及ぼします。
連帯債務者には求償権を認めています。
しかし求償できる額は各自の負担部分のみです。
「連帯債務」について詳しい解説はこちらです↓
保証・連帯保証
「保証」とは、主たる債務が債務を履行しない場合に、第三者(保証人)が履行の責任を負うこといいます。
保証は人的担保であることが、連帯債務とは異なっています。
保証人が負う債務を「保証債務」といいます。
保証債務は、債権者と第三者(保証人)間の保証契約にて発生します。
「連帯保証」とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担することを保証契約において約束した形態をいいます。
「普通保証」には、 「付従性」と「補充性」が認められ、「分別の利益」もあります。
しかし、「連帯保証」には「付従性」はありますが、「補充性」と「分別の利益」は認められません。
なので、連帯保証人は、催告の抗弁権と検索の抗弁権がなく、主たる債務額の全額を負担することになります。
「保証・連帯保証」について詳しい解説はこちらです↓
債権譲渡
点をまとめました
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「債権譲渡」とは、債権を同一性を保ったまま、債権者(譲渡人)が第三者(譲受人)と契約し、債権を譲渡することです。
宅建で出題される債権譲渡とは、指名債権を指しています。
債権譲渡は、禁止特約にて制限することができます。
債権譲渡の対抗要件は、「通知」と「承諾」です。
債権譲渡を第三者に対抗するには、「確定日付のある証書」での「通知」または「承諾」が必要です。
「債権譲渡」について詳しい解説はこちらです↓
債権の消滅
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債権消滅の代表的な事由は「弁済」と「相殺」です。
「弁済」とは、債務者が債務の履行を果たし、債権者の債権が目的達成にて消滅することです。
「相殺」とは、双方がお互いに同種の債権を有する場合に、相殺適状が備わったときは、一方的意思表示で双方の債権と対等額で消滅させることをいいます。
「債権の消滅」について詳しい解説はこちらです↓
売買契約・贈与契約
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「売買契約」とは、売主が特定の財産権を買主に移転することを約束し、他方、買主は売主に対して代金を支払うことを約束することによって効力を生じる契約のことをいいます。
不動産などの売買契約締結の際に、当事者の一方から相手方に対し交付される金銭のことを「手付」といいます。
売買契約が成立すると、その効力として売主・買主にそれぞれの権利と義務が発生します。
売主が負う義務は、「所有権移転義務」と「担保責任」です。
買主が負う義務は、「代金支払い義務」です。
「贈与」とは、当事者の一方が財産を無償で与える意思表示をし、相手方がそれを承諾することによって成立する契約です。
「売買契約・贈与契約」について詳しい解説はこちらです↓
債務不履行による契約解除
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数人の当事者が互いに申込と承諾という相対立する意思表示が合致することによって何らかの拘束力をもたせることを約束させる法律行為を「契約」といいます。
その契約において、一方が故意または過失により債務を約束通り履行しないことを「債務不履行」といいます。
債務不履行になった場合の債権者は下記を債務者に求めることができます。
- 履行の請求(履行遅滞のみ)
- 損害賠償
- 契約解除
「債務不履行による契約解除」について詳しい解説はこちらです↓
売主の担保責任・瑕疵担保責任
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「売主の担保責任」とは、売買によって買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主が負う無過失責任のことをいいます。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主の担保責任が生じる場合としては下記の5つの場合があります。
- 全部他人物売買:権利の全部が他人に属するためにその権利を買主に移転できない場合
- 一部他人物売買:権利の一部が他人に属するためその権利を買主に移転できない場合
- 数量が不足:数量不足、または一部が契約時に滅失していた場合
- 権利の制限:他人の用益権によって権利が制限を受けている場合
- 抵当権の実行:他人の担保物権の実行により買主が所有権を失った場合
この5つの場合で宅建試験で押さえるべき場合は「全部他人物売買」「一部他人物売買」「抵当権の実行」です。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主に対する責任の追及の手段は下記の3つがあります。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある5つ場合と買主がその事実について善意か悪意かによって、売主に対する責任追及の3つの手段のどれが認められるかが異なります。
「瑕疵担保責任」とは、売買契約の目的に隠れた物理的欠損や法律的欠損があった場合に、売主はその欠損について故意・過失がなくても保証しなければならない責任のことをいいます。
買主は売買契約の目的物に瑕疵があることについて善意無過失なら、売主に瑕疵担保責任を追及することができます。
追及することのできる権利は下記の通りです。
「売主の担保責任」では追及することのできた「代金減額請求権」は行使することはできません。
瑕疵担保責任を追及できる期間(権利行使期間)は瑕疵を発見してから1年間です。
瑕疵担保責任を追及する権利は、引渡しを受けてから10年で消滅します。
「売主の担保責任・瑕疵担保責任」について詳しい解説はこちらです
委任と請負
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「委任」と「請負」は毎年どちらかが1問交互に出題されています。
委任
「委任」とは、法律行為などの事務処理を他人に依頼(委任)する契約のことをいいます。
委託した者を「委任者」、委託を受けた者を「受任者」といいます。
委任者が委託し受任者がこれを承諾することによって成立する諾成契約です。
委任契約は、報酬支払いを要素としていない原則として無償契約です。
なので、受任者のみが義務を負担し、委任者が無償で利益を得ることになるので片務契約でもあります。
委任は法律行為を他人に依頼するわけなので、当事者の信頼関係を保つ必要があります。
当事者の信頼関係の中で、委任者と受任者の義務の履行は誠実に行われる必要があります。
受任者が負う義務は、下記の5つです。
- 善管注意義務
- 自己服務義務
- 報告義務
- 受け取った金銭等の引渡し義務
- 受任者の金銭消費責任
委任者が負う義務は、下記の3つです。
- 報酬支払義務
- 費用前払い義務
- 費用等の償還請求
委任契約は、委任者、受任者のいずれからでも特別の理由なくいつでも委任契約の解除をすることができます。
やむを得ない事由があったときを除いて、当事者の一方が相手方に不利な時期に解除をしたときは、解除による損害を賠償しなければなりません。
委任の解除の効果は、将来に向かってのみ生じます。
委任の終了事由は下記の4つです。
- 両当事者のどちらかが解除権を行使したとき
- 委任事務が完了したとき
- 委任者の死亡、破産手続き開始の決定があったとき
- 受任者の死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判があったとき
「委任」について詳しい解説はこちらです↓
請負
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
仕事の完成を注文する側を「注文者」といい、仕事の完成を請け負う側を「請負人」といいます。
請負は請負人が注文者にある仕事を完成することを約束し、これに対して注文者がその完成した仕事の対価(報酬)を支払うことを約束することによって成立します。
請負契約は諾成契約なので、口約束で成立します。(書類等不要)
請負人が注文者に対して負う義務は下記の2つです。
- 仕事の完成義務:請負人は下請負人に仕事の完成を委ねることも可
- 請負人の担保責任:請負人は注文者に対しその瑕疵の担保責任を負う
請負人が注文者に対して負う瑕疵担保責任は無過失責任とされます。
請負人に瑕疵担保責任が生じた場合、注文者が有る権利は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権:瑕疵が重要でない場合で修補に過分の費用を要するときは、修補請求はできない。
- 損害賠償請求:修補が可能な場合は、損害賠償請求か瑕疵修補請求かどちらかを選択できる
- 契約解除権:目的物が建物の場合、いかに重大な瑕疵があっても解除権は認められない
担保責任の存続期間は
- 土地の工作物:引き渡しから5年
- 石造・れんが造・金属造などの特殊工作物:引き渡しから10年
「売主の担保責任」とは、売買によって買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主が負う無過失責任のことをいいます。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主に対する責任の追及の手段は下記の3つがあります。
「請負人の担保責任」とは、請負契約で請負人が完成させてた仕事の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人が負う無過失責任のことをいいます。
請負契約の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人に対する責任の追及の手段は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権
- 損害賠償請求
- 契約解除権
請負契約の請負人の義務は、「仕事の完成」と仕事の目的物の引き渡しを要するときは「引き渡し」です。
それに対して注文者の義務は、「報酬支払い」です。
この報酬支払義務は、特約がない限り後払いが原則なので、同時履行の関係にあるのは、「目的物の引き渡し」と「報酬支払い」です。
注文者は、請負人が仕事を完成しない間であれば、すでに仕事に着手していたとしても、いつでもその損害を賠償して請負契約を解除することができます。
「請負」について詳しい解説はこちらです↓