≪宅建試験対策≫取得時効とは?
宅建の本試験での時効の問題の出題頻度は、2年に1回程度です。
出題頻度的にはそんなに高いわけではありませんが、時効はほかの項目と絡めて出題され、ほかの項目の論点を理解するうえで基礎的な知識となる項目です。
毎年出題される項目ではないし、単独で出題されることも少ないので勉強が疎かになりがちの項目です。
しかし、民法の中では得点しやすい項目でもあるので得点しやすい項目でしっかり得点していくことは宅建試験合格のためには必須です。
取得時効
時効とは、ある事実状態が一定期間継続した場合、真実の権利関係にかかわらず、その継続した事実を尊重して、権利の取得または消滅という効果を発生させる制度のことです。
人の物を使い続けると時効によって自分のものと主張することができることを「取得時効」といい、これまで持っていなかった権利を時間の経過により取得することです。
時効で取得できる権利の代表は、所有権を典型とする財産権です。
時効によって所有権等を取得するためには、「所有の意思をもって」「平穏」かつ「公然」に他人の物を占有しなければなりません。
取得時効の完成に必要な期間は、占有開始時の状態で違います。
- 占有開始時に悪意または有過失の場合:20年
- 占有開始時に善意かつ無過失の場合:10年
この占有は代理人でもすることができ、代理人が占有することを「間接占有」といいます。
取得時効は、「占有期間」と「占有開始の状態」を前主から引き継ぐか引き継がないか選択することができます。
時効取得を勉強するには、基礎知識として占有の知識が必要です。
占有について詳しくはこちらで解説しています。→占有とは?
時効は単体での出題回数は少ないですが、取得時効は他の項目で基礎知識的に出てきます。
取得時効
「取得時効」とは、一定の事実状態が一定期間継続することにより、財産権が取得される時効のことをいいます。
土地は、土地登記簿上で「一筆(ひとふで・いっぴつ)」「二筆(ふたふで・にひつ)」と数えられます。
なので、一個の土地のことを「一筆の土地」と呼びます。
一筆の土地の一部についても、取得時効は成立し得る(判例)
どういうことかというと、Aは甲建物を所有していてこの建物はA所有の土地と、B所有の一部の土地にかかって建っています。
このように、B所有の一部の土地に関しても占有が認められ、要件が揃えばこの土地の一部について取得時効が成立する。ということです。
時効取得できる権利
時効取得できる権利の代表は、所有権を典型とする財産権です。
逆に時効取得のできない権利には、取消権・抵当権・留置権・先取特権などがあります。
時効取得できる権利とできない権利を一覧表にまとめました。
権利 | |
---|---|
時効取得できる権利 | 財産権(所有権・地上権・永小作権・地役権) 不動産賃借権 |
時効取得できない権利 | 取消権・抵当権・留置権・先取特権 |
取得時効の完成要件
時効によって所有権等を取得するためには、「所有の意思をもって」「平穏」かつ「公然」に他人の物を占有しなければなりません。
「平穏」かつ「公然」に占有するとは、暴行や強迫などによる占有をしないで、通常の使用がされていれば十分に要件が満たされていると考えられています。
自己所有の意思をもってする占有のことを「自主占有」といい、自己所有の意思を持たずに占有することを「他主占有」といいます。
時効取得するためには、自主占有している必要があります。
なので、自己所有の意思を持たずに占有することになる賃借権に基づく占有は何年継続しても所有権の時効取得は主張することは出来ません。
しかし要注意点として、「不動産賃借権」も時効取得することができる。という判例があります。
たとえば、AはBから甲土地を借りて25年間賃料を払っています。
しかしこの甲土地はB所有地ではなく、本当はCが所有権を持っていました。
この場合のAは、25年間賃料を払っているため不動産賃借権の時効取得を主張でき、Cに賃料を払うことで甲土地を借り続けることができます。
AはCとは賃貸借契約は結んでいませんが、不動産賃借権を時効取得したことにより、甲土地を借りる権利を有したことになります。
Aは「不動産賃借権」と取得しただけで「甲土地所有権」を取得したわけではありません。
なので、Aはあくまでも「甲土地の賃借人」を続けることができる。ということです。
取得時効が完成する期間
取得時効の完成に必要な期間は、占有開始時の状態で変わります。
占有開始時の事情 | 時効完成期間 |
---|---|
悪意または有過失 | 20年 |
善意かつ無過失 | 10年 |
ここでの善意・悪意は、「占有物が他人のものであることを知っているか知らないか」ということです。
善意なのか悪意なのかのは、占有の開始時で決まります。
なので占有開始時に善意無過失であれば、あとで悪意に転じても10年で時効取得することができます。(判例)
たとえば、Aは乙建物を占有していました。
しかし本当は乙建物の所有権はBにありましたが、Aはそのことについて善意無過失でした。
占有から5年後に、Aは乙建物がBの所有物と知りました。
この場合、Aは時効中断がなければ占有開始後10年で乙建物を取得することができます。
代理人による間接占有
占有権は代理人によっても取得することができます。
代理人が占有することを「間接占有」といいます。
たとえば、BはA所有の土地建物と知りながら8年間自主占有していました。
その後Bは、この土地建物をCに12年賃貸しました。
Bが自主占有していた8年間とCが間接占有していた12年間合わせて20年になり、Bはこの土地建物を時効取得することができます。
占有の継承
売買や相続等によって占有を承継した者は、時効の占有期間も継承することができます。
時効の占有期間は、自分の占有期間のみを主張するか、前主の占有期間を併せて主張するかを選択することができます。
ただし、前主の占有期間を併せて主張する場合は、前主の占有の悪意・有過失も承継することになります。
具体例で見てみましょう!
AはDの建物を、所有の意思をもって平穏かつ公然に7年間占有していました。
Aが死亡によってBが相続により取得したとして8年間利用していました。
その後BさんがCに売却してCが9年間占有しました。
*C単独の場合
Cが占有開始時善意無過失→あと1年で時効完成
Cが占有開始時悪意→あと11年で時効完成
*B+Cの場合
Bが占有開始時善意無過失→B+C=11年→時効完成
Bが占有開始時悪意→B+C=17年→あと3年で時効完成
*A+B+Cの場合
Aが占有開始時悪意でも→A+B+C=24年→時効完成