≪宅建試験対策≫民法上の所有権とは?
「物権」は毎年2問前後出題されています。
物権は民法の中でも、最も難しいと言われています。
本試験合格を考えると、民法では14問中8問は正解しておきたいところです。
必ず出題されている「抵当権」を確実に正解するため、「抵当権」だけに絞って勉強することもありだと思います。
しかし、ほかの項目も絶対正解しておきたい分野の基礎知識になるため確実に合格したい人は学習しておくべきです。
民法上の所有権とは?
「所有権」とは、法令の範囲内で、物を全面的・かつ自由に使用・収益・処分することができる物権です。
隣の土地所有者との関係と、利害を調整するため民法に規定されてもののうち宅建試験に出そうなものは下記のとおりです。
- 隣地の使用請求
- 公道に至るための他の土地の通行権
- 自然水流に対する妨害
- 境界標の設置と保存費用
- 竹木の枝の切除及び根の切り取り
- 境界線付近の建築制限
所有権を論点として問題が出題されることはほぼないです。
試験範囲内なので解説しますが、こんな民法上の規定もあるんだな…程度に学習する程度で大丈夫です!
所有権
「所有権」とは、法令の範囲内で、物を全面的・かつ自由に使用・収益・処分することができる物権。
たとえば、土地について所有権を有している場合
その土地上に自ら建物を建てて住み(使用)
他人に賃貸して地代を受領し(収益)
他人に売却して代金を受領(処分)
することができます。
物権の中心となる権利が所有権です。
相隣関係
「相隣関係」とは、隣り合った土地の間の法律的関係をいいます。民法上の法律用語です。
隣の土地所有者との関係と、利害を調整するため民法に規定されているものを紹介します。
隣地の使用請求
民法209条
1項 土地の所有者は、境界またはその付近において障壁または建物を築造し又は修繕するために必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。
ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
たとえば、自分の家の壁を修理しようとしたときに、隣人の承諾があれば、必要な範囲で隣人の土地を使用することができる。ということです。
しかし、それによって隣人が損害を受けたときは、隣人は使用者に対して、その償金を請求することができます。
同条2項
前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる
公道に至るための他の土地の通行権
他の土地に囲まれて行動に通じない土地を、「袋地」といいます。
この袋地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができます。
しかし、通行の場所及び方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ばなくてはなりません。
また、通行に際して必要がある場合は、道路を開設することができます。
なお、囲んでいるのかの土地の所有者等に対して通行権を主張するために、袋地について土地所有権の登記を備えている必要はありません。(判例)
上の図で、たとえばAが公道に出るにはCの土地を通行するとします。
袋地の所有者Aは、Cの土地の通行による償金をCに払わなければなりません。(1年毎)
では、共有分割や一部譲渡により袋地が生じた場合はどうでしょう?
こうゆう場合は、Aは公道に至るまでの通行については他の分割した土地しか通行することはできません。
図の場合だと、Cの土地になります。
そしてこのような場合は、償金(通行料)は払う必要はありません。
自然水流に対する妨害
土地の所有者は、隣地から水が自然に流れてくるのを妨げることはできません。
しかし、水の流れが天災やその他の避けることのできない事変により低地においてふさがれてしまったときは、高地の所有者は自己の費用で、水流の障害を除去するため必要な工事をすることができます。
境界標の設置と保存費用
民法第223条
土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
境界は、連続している土地を区分するものです。
隣の土地との間に境界がありますが、地面に線が引いてあるわけではないので、何か目印がなければ隣の土地と区別がつきません。
この隣の土地と区別する目印を「境界標」といいます。
この境界標の設置及び維持の費用は、相隣者が等しい割合で負担しなければなりません。
竹木の枝の切除及び根の切り取り
民法223条
1項 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。2項 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
簡単にいえば、隣の家の木の枝が越境してきたら、その隣人の竹木の所有者の承諾がないと切り取ることはできないが、竹木の根であれば自ら切り取ることができます。
境界線付近の建築制限
境界線から1メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことができる窓または縁側を設ける者は、目隠しを付けなければなりません。(民法第235条)