≪宅建試験対策≫請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利 ※一覧表あり※
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
請負人が注文者に対して負う瑕疵担保責任は無過失責任とされます。
請負人に瑕疵担保責任が生じた場合、注文者が有る権利は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権:瑕疵が重要でない場合で修補に過分の費用を要するときは、修補請求はできない。
- 損害賠償請求:修補が可能な場合は、損害賠償請求か瑕疵修補請求かどちらかを選択できる
- 契約解除権:目的物が建物の場合、いかに重大な瑕疵があっても解除権は認められない
担保責任の存続期間は
- 土地の工作物:引き渡しから5年
- 石造・れんが造・金属造などの特殊工作物:引き渡しから10年
請負契約とは
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
仕事の完成を注文する側を「注文者」といい、仕事の完成を請け負う側を「請負人」といいます。
注文者の報酬支払いと請負人が仕事を完成することが対価関係に立つという点で、委任とは異なっています。
たとえば、Bは土地を所有しておりその上に建物を建てたいと思っていたので、Aに対して甲建物建築したら報酬を払うと契約しました。
登場人物の整理をします。
A:請負人(甲建物建築を請け負った人)
B:注文者(甲建物建築を注文した人)
AB間の契約:請負契約
このように請負人Aが甲建物の建築する義務を負い、一方注文者Bは報酬を支払う義務を負っています。
つまり、請負は請負人が注文者にある仕事を完成することを約束し、これに対して注文者がその完成した仕事の対価(報酬)を支払うことを約束することによって成立します。
請負契約は諾成契約なので、口約束で成立します。(書類等不要)
ここで注意なのは、同時履行の関係にあるのは「報酬支払義務」と「目的物引渡し義務」で、「仕事の完成義務」ではありません。
瑕疵担保責任に基づく注文者の権利
瑕疵とは、通常備わっているものが欠損・欠陥していることをいいます。
請負人は注文者に対して、無過失であっても瑕疵担保責任を負います。
請負人に瑕疵担保責任が生じた場合、注文者が有る権利は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権
- 損害賠償請求
- 契約解除権
ひとつずつ解説していきます。
瑕疵修補請求権
第634条
1項 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
請負人がした仕事の目的物に瑕疵がある場合は、注文者はその瑕疵について修理・修補を請求することができます。
たとえば、BがAに対して甲建物建築を注文しました。
甲建物が完成し、Bに引き渡された後に雨漏りが発見されました。
このような場合、注文者Bは瑕疵(雨漏り)を修繕するよう請求することができます。
しかし、瑕疵修補請求権は「相当の期間」を定めて請求しなければなりません。
宅建試験では相当な期間は○○か月か?ということは論点になりません。
なので瑕疵修補請求権は「相当な期間」が必要というワードだけ覚えればOKです!
そして修補請求した場合は、修補が完了するまで報酬の支払いを拒絶することができます。
瑕疵修補請求ができない場合
しかし、瑕疵修補請求ができない場合があります。
それは、「瑕疵が重要でない場合で修補に過分の費用を要するとき」です。
重要ではない瑕疵のために、相当な費用をかけて修補させるのは請負人にとっては過酷すぎるからです。
しかしそれでは注文者に損害があるため、このような場合には瑕疵修補請求ではなく損害賠償請求として対応することになります。
なので、請負契約の目的物たる建物を建て替えざる負えない場合には、注文者は、請負人に対して、建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償請求をすることができます。(判例)
損害賠償請求権
第634条
2項 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第533条の規定を準用する。
「瑕疵の修補に代えて」とは、瑕疵修補請求の代わりに損害賠償請求をするということです。
なので注文者は、修補が可能であっても損害賠償請求をすることができます。
言い換えれば、注文者は請負契約の目的物に瑕疵があった場合「瑕疵修補請求権」を行使するか「損害賠償請求」を行使するか選択できるということです。
しかし、修補請求をしても損傷が残る場合は「修補とともに」損害賠償請求をすることもできます。
なので、請負契約の目的物に瑕疵があった場合に注文者は
- 瑕疵修補請求権のみ
- 損害賠償請求権のみ
- 瑕疵修補請求権+損害賠償請求権
のどれを行使してもよいいうことです。
契約解除権
第635条
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。
注文者は、請負契約の目的物に瑕疵があり「契約の目的を達することができないとき」は契約解除をすることができます。
これは、売買契約の売主の瑕疵担保責任の解除権と同じです。
しかし、請負契約の解除権は条文の但し書が重要です。
それは、「建物その他工作物」にはこの解除権が認められないということです。
請負契約の目的物が「建物その他工作物」の場合、どんなに瑕疵が重大であっても解除権を行使することは出来ません。
建物の場合に、解除権を行使すると取り壊すことになり社会的・経済的に損失が大きく、請負人にとってあまりに過酷になりすぎるからです。
請負人が担保責任を負わない旨の特約をした場合
特約で担保責任を負わない旨を定めることは可能です。
第640条
請負人は、第634条又は第635条の規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実については、その責任を免れることができない。
注文者と請負人での当事者間で、”担保責任は負わない”と特約することは有効ですが、請負人が瑕疵があることを知りながら告げなかった場合は、請負人は担保責任を免れることは出来ません。
担保責任の存続期間
注文者が上記の権利(瑕疵修補請求権・損害賠償請求権・契約解除権)を行使するには期間の制限があります。
言い換えれば、請負人が担保責任を負わなければいけない期間が決まっているということです。
担保責任の存続期間は下記のとおりです。
期間 | |
---|---|
土地の工作物 (普通工作物) |
引渡しから5年 (特約による伸長は10年まで) |
石造・レンガ造・金属等の 特殊工作物 |
引き渡しから10年 |
この期間内に工作物が瑕疵により滅失・損傷した場合はその損傷から1年以内 |
請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利まとめ
請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利を一覧表にまとめました!
注文者の権利 | 内容 |
---|---|
瑕疵修補請求権 | ・相当な期間を定めなければならない ・修補が完了するまで報酬支払いを拒絶できる ・瑕疵が重要でない場合で修補では過分の費用を要するときは修補請求できない(損害賠償請求なら可) |
損害賠償請求 | ・修補が可能であっても損害賠償請求できる ・修補を行なってもなお損傷が残る場合は「修補とともに」損害賠償請求も可 |
契約解除権 | ・目的物に瑕疵があり、契約の目的が達成できないときに行使できる ・目的物がその他工作物の場合は、行使できない |
担保責任の 存続期間 |
普通工作物:引き渡しから5年以内 特殊工作物:引き渡しから5年以内 (瑕疵による損傷があれば損傷から1年以内) |