≪宅建試験対策≫無権代理の相手方の保護
「代理制度」の宅建本試験出題される頻度は、毎年です。
宅建の権利関係法令(民法)の山場のひとつになります。
正直に代理制度は難しいです。
単純暗記だけでは、なかなか正解することは出来ません。
代理制度を理解するには、状況をイメージすることが大切です。
本試験で出題される可能性は高いので、難しいですが宅建試験合格のためには避けては通れない項目です。
無権代理の相手方の保護
代理行為をなした者が代理権を有しなかった場合を「無権代理」といいます。
無権代理行為の相手方を保護するために2つの権利があります。
- 催告権:善意・悪意を問わず本人に追認するかどうか解答を求める。
- 取消権:相手方が善意の場合のみ、本人が追認する前までなら契約自体を取消すことができる。
相手方が無権代理行為について善意無過失なら、無権代理人に契約の履行又は損害賠償請求を求めることができます。
「無権代理の相手方の保護」は代理制度の1番のポイントのひとつです。
無権代理行為の相手方に対する効果
無権代理行為は、原則としてその効力は有効に生じません。
無権代理行為を有効にその効力を生じさせるためには、本人に追認してもらう必要があります。
しかしそれでは、無権代理行為の相手方はその契約が有効になるか、無効になるか不安定な状況に置かれてしまいます。
そんな無権代理の相手方を保護するために民法では、本人に対して追認するかどうか解答を求めることができる「催告権」と、無権代理行為として行われた契約を取り消すことができる「取消権」を認めました。
相手方の催告権
第114条
前条の場合において、相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす。
無権代理行為の相手方は本人に対して、相当の期間を定めて追認するかどうかを確答するように催告することができます。
この権利を「催告権」といいます。
期間内に確答があればそれにより無権代理行為の有効・無効が確定し、確答がなければ追認拒絶したものとみなされ、その無権代理行為は無効が確定します。
たとえば、Aは甲土地を所有していました。
この甲土地をBが勝手に代理人を名乗りCに売りました。
この甲土地売買契約がBの無権代理行為だと知った相手方Cは、相当な期間を定めて本人Aに対して追認するかどうか解答を催告することができます。
この催告権は、相手方が善意でも悪意でもすることができます。
この場合の、善意・悪意は「この売買契約が無権代理行為だと知っていたか否か」ということになります。
相手方の取消権
第115条
代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない。
無権代理行為の相手方は、本人もしくは無権代理人に対して自分がした契約を取り消すことができます。
この権利を、「取消権」といいます。
相手が取消権を行使するには2つの要件が必要です。
- 契約時に無権代理であることを知らなかった=善意(過失の有無は問わない)
- 本人が追認する前
たとえば先ほどと同様に、
たとえば、Aは甲土地を所有していました。
この甲土地をBが勝手に代理人を名乗りCに売りました。
この場合、相手方Cは無権代理行為だったことにつき善意で、本人Aが無権代理人Bもしくは相手方Cに追認する前なら、この甲土地売買契約を取り消すことができます。
無権代理行為と知っていて(=悪意)契約を結んでいて、その契約を取り消すのはおかしいので、相手方Cが取消権を行使するには善意である必要があります。
そして相手方Cからしたら、無権代理行為と知らなくても契約内容には納得して契約したはずです。
なので、本人Aが追認してその契約を有効にしてしまった後は取消することは出来ません。
しかし本人の追認が、無権代理人に対してのみ行われ、相手方には行われない場合があります。
契約の本人がする追認は、無権代理人のみに行っても相手方のみに行っても有効に成立します。
無権代理人のみに追認を行った場合、追認があったことを相手方が知らない場合も考えられます。
なので、無権代理人のみに追認し、相手方がその追認されたことを知らなかったら相手方は取消権を行使することができます。
本人の立場からみると、「無権代理人と相手方の両方に追認」もしくは「相手方に追認」をすれば無権代理行為の効果は有効に生じます。
しかし「無権代理人のみに追認」した場合は、追認した事実を相手方が知らなければ、無権代理行為が取り消される可能性がある。ということになります。
無権代理人の責任
無権代理行為と知らずに契約し、その契約も本人よって追認拒絶された相手方は不測の損害を受けることになります。
そのような場合、相手方は無権代理行為をした無権代理人に責任を負わせることができます。
契約の相手方が無権代理人に負わせることのできる責任は、下記のどちらかです。
- 契約の履行
- 損害賠償請求
責任追及する相手方は、契約が無権代理行為だったことに知らず、知らないことに過失がないことが必要です。
たとえば先ほどと同様に、
たとえば、Aは甲土地を所有していました。
この甲土地をBが勝手に代理人を名乗りCに売りました。
しかし本人Aは、無権代理人Bがした甲土地売買契約を追認拒絶しました。
本人Aが追認拒絶をしたのでこの甲土地売買契約は確定的に無効になります。
この場合、善意無過失の相手方Cは無権代理人Bに「契約の履行」または「損害賠償請求」をすることができます。
注意すべきなのは、責任を負わせることができるのは「履行の請求」か「損害賠償請求」のどちらかです。
あと、無権代理人が未成年者などの制限行為能力者であれば無権代理行為の責任を負わせることは出来ません。