≪宅建試験対策≫債権譲渡の第三者対抗要件
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
債権譲渡の第三者対抗要件
「債権譲渡」とは、債権を同一性を保ったまま、債権者(譲渡人)が第三者(譲受人)と契約し、債権を譲渡することです。
宅建で出題される債権譲渡とは、指名債権を指しています。
債権譲渡を債務者に対抗するために必要な要件は、「通知」または「承諾」です。
しかし、債務者以外の第三者に対抗するためには「確定日付のある証書」で「通知」または「承諾」がなされなければなりません。
この指名債権譲渡の対抗要件は、債権譲渡の中での1番重要論点ですので詳しく解説していきます。
債権譲渡の債務者への対抗要件について詳しくはこちらで解説しています。→指名債権の譲渡と債務者に対する対抗要件
債権譲渡の第三者とは?
債権譲渡の第三者とは、簡単に言うと債権の譲渡が二重に行われた場合です。
たとえば、AはBに対して1000万円の債権を有していました。
Aはこの1000万円の債権をCとDに譲渡しました。
AがBに対して有する1000万円は、CとDに二重譲渡されています。
この場合のCとDが債権譲渡の第三者となり、この第三者のどちらに1000万円債権を譲渡されるかで対抗関係にあります。
CとDが互いに「自分がこの1000万円債権の新債権者だ!」と主張するためには、要件を満たす必要があります。
債権の二重譲渡の対抗要件は「確定日付」
指名債権の譲渡において譲受人が債務者に「自分が債権者だ!」と主張するには、「通知」または「承諾」で対抗することができます。
しかし先ほどの例のように、債務者以外の第三者に主張するには、「確定日付のある証書」による「通知」または「承諾」が必要です。
確定日付のある証書の例は、内容証明郵便や公正証書です。
たとえば、AがBに対する債権をCに譲渡した後Dに譲渡しました。
この場合、CとDどちらを「新債権者」として主張することができるかを決めるのは確定日付のある証書で「通知」または「承諾」をされたかです。
譲渡人Aが債務者Bに対して債権譲渡を「通知」した場合
- 「Cに債権譲渡した」と電話で通知した
- 「Dに債権譲渡した」と確定日付のある証書で通知した
確定日付のある証書を備えたDが新債権者であることを主張することができます。
債務者Bが第三者に債権譲渡を「承諾」した場合
- 「Cに債権譲渡を了解した」と電話で承諾した
- 「Dに債権譲渡を了解した」と確定日付のある証書で承諾した
Dが確定日付のある証書を備えているのでDが新債権者であることを主張することができます。
両方に確定日付のある証書による通知または承諾がなされている場合
債権の二重譲受人の両方ともに確定日付のある証書を備えているときは、先に到達した方を優先します。
たとえば、AがBに対する債権をCに譲渡した後Dに譲渡しました。
その債権譲渡の通知が両方とも確定日付のある証書で受け取った場合
譲渡人Aが債務者Bに対して「通知」した場合に
- 「Cへ債権譲渡した」と確定日付のある証書を4/1に送付して、債務者Bに到達したのが4/4
- 「Dへ債権譲渡した」と確定日付のある証書を4/2送付しに送付して、債務者Bに到達したのが4/3
なら、先に到達しているのはDなのでDが新債権者となります。
ここで注意すべきなのは、証書に書かれている日付や送付した日は判断要件ではないということです。
同時に確定日付のある証書が到達した場合
債権が二重譲渡され、確定日付のある証書による通知が債務者に同時に到達した場合には、譲受人は両方とも請求することができます。
たとえば、AがBに対する債権をCに譲渡した後Dに譲渡しました。
債務者Bは、「Cに債権譲渡した旨の確定日付のある証書」と「Dに債権譲渡した旨の確定日付のある証書」を同時に受け取りました。
このような場合、CもDも両方とも債務者Bに対して請求する権利を持っています。
しかし、債務者BはCかDのどちらかの譲受人に弁済すれば債務は消滅します。
一方の譲受人に弁済したBは免責されているので、弁済されなかった側の譲受人(上の図のD)はBに請求することはできません。
弁済されなかった側の譲受人(上の図のD)は、泣き寝入りするか譲渡人(上の図のA)に損害賠償請求等をするかです。