≪宅建試験対策≫異議をとどめない承諾
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
異議をとどめない承諾
「異議をとどめない承諾」とは、主張できる事由(相殺・弁済・同時履行の抗弁権)があるにもかかわらず、そのことを告げずに承諾することです。
異議をとどめない承諾をしてしまうと、債権が譲渡され譲渡人に対抗できた事由があっても譲受人に対抗することはできません。
「債権譲渡」とは、債権を同一性を保ったまま、債権者(譲渡人)が第三者(譲受人)と契約し、債権を譲渡することです。
宅建で出題される債権譲渡の債権とは、指名債権を指しています。
債権譲渡の対抗要件は、「通知」と「承諾」です。
債権譲渡の対抗要件についてはこちらで詳しく解説しています。
二重譲渡の対抗要件についてはこちらで詳しく解説しています。
指名債権譲渡の通知又は承諾の効果
民法468条
1項 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。
2項 譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者はその通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。
「異議をとどめない承諾」とは、主張できる事由(相殺・弁済・同時履行の抗弁権)があるにもかかわらず、そのことを告げずに承諾することです。
異議をとどめない承諾をしてしまうと、債務者は主張できる事由(相殺・弁済・同時履行の抗弁権など)があり、主張できる状態(相殺敵状、弁済期が到来している等)であっても譲渡人に対抗することはできません。
「通知をしたにとどまるとき」とは、文字通り譲渡人から債権譲渡の「通知」は受けているけど、「承認」はしていない。というときです。
債務者は譲渡人から債権譲渡の通知を受けても、「承諾」をしなければ、主張できる事由(相殺・弁済・同時履行の抗弁権など)があり、主張できる状態(相殺適状、弁済期が到来している等)であれば、譲受人に対して主張することができます。
対抗することができた事由とは、主張できる事由(相殺・弁済・同時履行の抗弁権)です。
「債務を消滅させることができる」ということは、「弁済」や「相殺」です。
「譲渡人が有する債務を履行しないなら債務者も履行しない!」ということは、「同時履行の抗弁権」です。
「債権譲渡」自体は、譲渡人と譲受人の合意によって成立するので、債務者が「債権譲渡するな!」と対抗することはできません。
弁済と相殺は効果は似ているので、今回は「相殺」の事由で「通知」と「承諾」の効果について解説します。
相殺
たとえば、AがBに対して有する債権有し、BはAに対する反対債権を有していました。
その後、AはBに対する債権をCに譲渡しました。
このような場合、譲渡人Aが債務者Bに対して債権譲渡の通知にとどまるときは、債務者Bは譲受人Cに対して相殺を主張することができます。
なので、債務者Bは反対債権額の分の債務を免れることになります。
しかし、債務者Bが異議をとどめないで承諾したときは、譲渡人に対して反対債権があり、相殺適状であっても譲受人に対抗することはできません。
「異議をとどめない承諾」をしたということは、債務者Bは、「債権者Aに対して反対債権を有しているため相殺できる」ということを告げずに、「AからCへの債権譲渡を了解した」と承諾していることになります。
なので、異議をとどめない承諾をした後に債務者Bが旧債権者Aに対して反対債権で相殺し、債務を免れることはできません。
抵当権付き賃料債権の譲渡
たとえば、AはBに対する債権を担保するためにB所有の甲建物に抵当権を設定しています。Bは甲建物をCに賃貸しているので賃料債権を有しています。
BがこのCに対する賃料債権をDに譲渡し、Cに対して通知を行いました。
その後、BはAに対する債務を弁済することができず、抵当権の実行がされ甲建物が差押さえられました。
登場人物の立場を整理をします。
A:Bに対する債権を有している債権者、抵当権者
B:Aに対して債務を負っている債務者・甲建物の賃貸人・賃料債権の譲渡人
C:甲建物の賃借人
D:賃料債権の譲受人(賃料債権の新債権者)
このような場合、債権者Aは抵当権実行による差押えを対抗要件として、賃料債権を譲り受けたDに対して対抗することができます。
譲受人Dは、抵当権付き建物の賃料債権を譲渡されています。
なので、抵当権が実行されれば債権者Aは甲建物から受ける賃料から弁済を受けることができます。
抵当権について詳しい解説はこちら→抵当権の絶対要点まとめ!ポイントだけ図と一覧表で一気に覚えよう
弁済後に債権譲渡が無効になっても債務者の弁済は有効
参考程度の事例を解説します。
もし対抗要件を備えた新債権者に弁済後、債権譲渡の契約が無効となった場合。
善意無過失の債務者は保護され、債務者が行った弁済は有効になります。