≪宅建試験対策≫売主の担保責任と請負人の担保責任
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
売主の担保責任と請負人の担保責任
「売主の担保責任」とは、売買によって買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主が負う無過失責任のことをいいます。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主に対する責任の追及の手段は下記の3つがあります。
「請負人の担保責任」とは、請負契約で請負人が完成させてた仕事の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人が負う無過失責任のことをいいます。
請負契約の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人に対する責任の追及の手段は下記の3つです。
- 瑕疵修補請求権
- 損害賠償請求
- 契約解除権
宅建試験では、売主の担保責任と請負人の担保責任を合わせた問題が出題されます。
問が売買契約の問題なのか、請負契約の問題なのかをしっかり見極めれるようにしましょう!
売主の担保責任とは
「売買契約」とは、売主が特定の財産権を買主に移転することを約束し、他方、買主は売主に対して代金を支払うことを約束することによって効力を生じる契約のことをいいます。
売買の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主が負う無過失責任のことを「売主の担保責任」といいます。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主の担保責任が生じる場合としては下記の5つの場合があります。
- 全部他人物売買:権利の全部が他人に属するためにその権利を買主に移転できない場合
- 一部他人物売買:権利の一部が他人に属するためその権利を買主に移転できない場合
- 数量が不足:数量不足、または一部が契約時に滅失していた場合
- 権利の制限:他人の用益権によって権利が制限を受けている場合
- 抵当権の実行:他人の担保物権の実行により買主が所有権を失った場合
この5つの場合で宅建試験で押さえるべき場合は「全部他人物売買」「一部他人物売買」「抵当権の実行」です。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある場合に売主に対する責任の追及の手段は下記の3つがあります。
買主の取得した権利または物に不完全な点(瑕疵)がある5つ場合と買主がその事実について善意か悪意かによって、売主に対する責任追及の3つの手段のどれが認められるかが異なります。
売主の担保責任が生じる場合 | 買主の 善意・悪意 |
契約解除権 | 損害賠償請求権 | 代金減額請求権 | 権利行使 期間 |
---|---|---|---|---|---|
全部他人物売買 | 善意 | ○ | ○ | ― | 制限なし |
悪意 | ○ | × | ― | 制限なし | |
一部他人物売買 | 善意 | ○ (目的不達成時) |
○ | ○ | 事実を知ってから 1年以内 |
悪意 | × | × | ○ | 契約時から 1年以内 |
|
数量が不足 | 善意 | ○ (目的不達成時) |
○ | ○ | 事実を知ってから 1年以内 |
悪意 | × | × | ― | × | |
権利の制限 | 善意 | ○ (目的不達成時) |
○ | ― | 事実を知ってから 1年以内 |
悪意 | × | × | ― | × | |
抵当権の実行 | 善意 | ○ | ○ | ― | 制限なし |
悪意 | ○ | ○ | ― | 制限なし |
売主の担保責任について詳しくはこちらで解説しています。
請負人の担保責任とは
「請負」とは、当事者の一方(注文者)が仕事の完成に対して報酬を支払うことを約束し、他方(請負人)がこれを承諾することによって成立する双務・有償・諾成の契約です。
請負契約で請負人が完成させた仕事の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人が負う無過失責任のことを「請負人の担保責任」といいます。
請負契約の目的物に不完全な点(瑕疵)がある場合に請負人に対する責任の追及の手段は「瑕疵修補請求権」・「損害賠償請求」・「契約解除権」の3つです。
請負契約の瑕疵担保責任に基づく注文者の権利を一覧表にまとめました。
注文者の権利 | 内容 |
---|---|
瑕疵修補請求権 | ・相当な期間を定めなければならない ・修補が完了するまで報酬支払いを拒絶できる ・瑕疵が重要でない場合で修補では過分の費用を要するときは修補請求できない(損害賠償請求なら可) |
損害賠償請求 | ・修補が可能であっても損害賠償請求できる ・修補を行なってもなお損傷が残る場合は「修補とともに」損害賠償請求も可 |
契約解除権 | ・目的物に瑕疵があり、契約の目的が達成できないときに行使できる ・目的物がその他工作物の場合は、行使できない |
担保責任の 存続期間 |
普通工作物:引き渡しから5年以内 特殊工作物:引き渡しから5年以内 (瑕疵による損傷があれば損傷から1年以内) |
請負人の担保責任について詳しい解説はこちらです。
売主の担保責任と請負人の担保責任の問題
宅建試験では、売主の担保責任と請負人の担保責任の問題を合わせた問題がよく出題されます。
たとえば、分譲業者Aは建築会社Cにマンションを建築させる請負契約を結びました。Aはこのマンションの303号室をBに売買しましたが、この303号室に瑕疵が発見され、瑕疵により買主Bは402号室に住むという目的を達成できませんでした。
登場人物と状況を整理します。
A:売主・注文者(分譲業者)
B:買主
C:請負人(建築会社)
AB間の契約:売買契約
AC間の契約:請負契約
買主Bの取得した売買の目的物(303号室)に瑕疵があり、目的を達成できていないので、売主Aに対して担保責任として追及できる権利は「契約解除権」と「損害賠償請求権」です。
それに対して分譲業者Aが請負契約の目的物(マンション)に瑕疵があるため請負人である建築会社Cに対して担保責任として追及できる権利は「瑕疵修補請求権」と「損害賠償請求権」です。
ここでの重要ポイントは、買主Bは分譲業者(売主)Aに対して契約解除権を行使できるが、注文者(分譲業者)Aは請負人(建築会社)Cに対して契約解除権を行使することはできない。ということです。
請負契約の目的物が建物その他工作物の場合、瑕疵がいかに重大でも解除権は認められません。
ここが宅建試験でよく問われる論点です。
なので問題文に
分譲業者Aは、請負人Cに対して請負契約の目的物に瑕疵があったことを理由に契約解除をすることができる。
とあれば、正解は「×」です。
逆に
買主Bは、売主Aに対して売買契約の目的物に瑕疵があり売買契約の目的物を達成できなかったとして契約解除をすることができる。
とあれば、正解は「〇」です。
このようにAB間の売買契約の問題なのか、AC間の請負契約の問題なのかで答えが変わってくるので、問題文をよく読みしっかり見極めれるようにしましょう!