≪宅建試験対策≫委任の終了
「債権」は、宅建の本試験では、毎年4問出題されます。
範囲も広く、論点もたくさんあるのでいくら対策しても見たことない問題が出ることもあります。
難易度も幅が広いので、勉強してもなかなか点数が伸びにくい分野です。
しかし、丸々捨ててしまったら他の教科での挽回が厳しくなるので、易しい問題は得点できるように勉強しておきましょう。
委任の終了
「委任」とは、法律行為などの事務処理を他人に依頼(委託)する契約のことをいいます。
委任した者を「委任者」、委任を受けた者を「受任者」といいます。
委任は法律行為を他人に依頼するわけなので、当事者の信頼関係を基礎として結ばれる契約です。
委任契約は、委任者、受任者のいずれからでも特別の理由なくいつでも委任契約の解除をすることができます。
やむを得ない事由があったときを除いて、当事者の一方が相手方に不利な時期に解除をしたときは、解除による損害を賠償しなければなりません。
委任の解除の効果は、将来に向かってのみ生じます。
委任の終了事由は下記の4つです。
- 両当事者のどちらかが解除権を行使したとき
- 委任事務が完了したとき
- 委任者の死亡、破産手続き開始の決定があったとき
- 受任者の死亡、破産手続開始の決定、後見開始の審判があったとき
委任の解除
民法第651条
1項 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
委任契約は、両当事者の信頼関係があって成立し続けるので一方または双方が相手方に対する信頼がなくなってまで成立させておく意味はありません。
なので、委任者、受任者いずれからでもいつでも委任契約を解除することができます。
委任契約の解除権は債務不履行等の特別な理由がなくても行使することができます。(無理由解除)
同条
2項 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
各当事者が理由なくいつでも解除することができますが、相手の不利な時期に解除した場合は、相手に対して解除による損害を賠償をしなければなりません。
しかし、やむを得ない事由で解除した場合は損害賠償は不要です。
一般的な契約の解除は、遡って効力を生じ原状回復義務が生じます。(遡及効)
しかし委任契約の解除に遡及効を認めても原状回復が不可能であることが多いため、委任の解除の効果は将来に向かってのみ生じます。(将来効)
一般的な契約解除について詳しくはこちらです→契約解除権
委任の終了の事由
委任契約は、下記の事由で終了するのが一般的です。
- 各当事者が委任契約の解除権を行使したとき
- 委任事務の履行が終了もしくは履行不能になったとき
しかし委任は当事者の信頼関係を基礎として成立する契約なので、当事者間の信頼関係が失われる原因と考えられる以下の事由でも終了します。
委任者の「死亡」又は「破産手続き開始の決定」
受任者の「死亡」又は「破産手続き開始の決定」又は「後見開始の審判」
注意すべきことは、委任者に「後見開始の審判」を受けても解除されないということです。
「後見開始の審判」を受けることは、事務処理能力が失われたことを意味します。
事務の処理をしてもらう側の委任者が、後見開始の審判を受けても関係ないですが、事務を処理する側の受任者に後見開始の審判がなされれば委任終了せざるを得ません。
これは、代理権の消滅事由と一緒です。
代理は委任より出題頻度が高い項目なので宅建合格のためには代理権消滅事由はしっかり勉強する必要があります。
なので、委任契約の終了事由は代理権消滅事由と一緒!と覚えればOKです。
委任終了の対抗要件
第655条
委任の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、これをもってその相手方に対抗することができない。
たとえば、委任者に破産手続き開始の決定が行われた場合、受任者にそのことを通知をしなければ、受任者は委任者が破産し委任契約が終了していることを知らないことがあり得ます。
委任者が破産し委任契約が終了しているにも関わらず、それを知らない受任者はその後、委任事務を処理するにあたり費用を負担してしまったら受任者は損をすることになります。
これを防ぐために、委任の終了事由があったときは、相手方に通知するか、相手方がこれを知っているときでなければ対抗できない。ということにしました。
なので破産しそれを通知しなかった委任者は、受任者が委任者の破産後に支出した立替費用の償還しなければなりません。
破産により委任契約が終了していること理由に立替費用の償還を拒否出来ないということです。