≪宅建試験対策≫代理制度
「代理制度」の宅建本試験出題される頻度は、毎年です。
宅建の権利関係法令(民法)の山場のひとつになります。
正直に代理制度は難しいです。
単純暗記だけでは、なかなか正解することは出来ません。
代理制度を理解するには、状況をイメージすることが大切です。
本試験で出題される可能性は高いので、難しいですが宅建試験合格のためには避けては通れない項目です。
代理制度
代理とは、本人に代わってその他の人(=代理人)が契約行為などの法律行為をすることです。
つまり代理制度というのは、代理人が本人のためにすることを示して相手方に意思表示をし、また意思表示を受けることによって、直接本人に効力を生じさせる制度です。
代理には下記の2種類があります。
- 法定代理:法律の規定により代理権が発生する
- 任意代理:本人の意思に基づいて代理権が発生する
「代理権」とは、代理人のした行為の効果を直接本人に帰属させる為に必要な権限のことをいいます。
代理権には制限があり、同一の法律行為について下記の2つは原則禁止されています。
- 自己代理:代理人が契約の相手方になること
- 双方代理:代理人が本人と相手の両方の代理人になること
法定代理・任意代理に共通する代理権の消滅原因は下記の3つです。
- 本人・代理人の死亡(代理権は相続できない)
- 代理人の破産開始の決定
- 代理人の後見開始の審判
代理行為を、有効に本人に対して直接効力を生じさせるには「顕名」をする必要があります。
「顕名」とは、代理人が代理行為を行う際に、相手方に対し「本人のためにすることを示す」意思表示のことをいいます。
代理人は制限行為能力者でもなることができます。
代理行為に瑕疵がある場合、瑕疵の事実の有無は代理人によって決します。
代理とは?
代理とは、本人に代わってその他の人(=代理人)が契約行為などの法律行為をすることです。
つまり、代理人が本人のためにすることを示して相手方に意思表示をし、また意思表示を受けることによって、直接本人に効力を生じさせる制度を代理制度といいます。
たとえば、Aが甲土地を売りたいのですが、土地売買の知識や経験がありませんでした。なので、Aは経験豊富なBに「甲土地を売ってくれないか」と頼みました。BはAの代理人として、甲土地を欲しがっているCと売買契約を結びました。
代理では、だれがどのポジションなのかをはっきりすることが重要なので登場人物と契約の状況を整理をします。
A:本人(売主)
B:代理人
C:相手方(買主)
AB間の契約:代理委任契約
BC間の契約:甲土地売買契約
甲土地売買契約自体は、BとCが結ぶことになります。
しかし、BはAを代理して契約を結んだだけなので、契約の効果は本人Aに帰属しなければなりません。
では本人Aにこの契約の効果を帰属させるには、どんな要件が必要なのでしょうか?
代理人の行為を本人に帰属させるためには、下記の2つの要件が必要です。
- 代理人が代理権を有していること
- 代理人がAさんの代理人であることを明かさなければならない(=顕名)
上の図のように、まずAはBに代理権を与えます。
代理人になったBはCに顕名し、売買契約の締結をします。
こうすることによってBC間の甲土地売買契約の効果は、本人Aに有効にその効果を生じさせることができます。
顕名とは
「顕名」とは、代理人が代理行為を行う際に、相手方に対し「本人のためにすることを示す」意思表示のことをいいます。
代理行為の効果を有効に本人に生じさせるには、代理人が相手方に対して「Aの代理人であるBです」のように顕名をする必要があります。
顕名をしないでした法律行為の効果は、本人にその効果が生じず、自己(代理人)のためにしたものとみなされます。
しかし、顕名しなくても「相手方が本人のためにすることを知っていたとき」や「相手方が本人のためにすることを知ることができたとき」は、その代理行為が本人に対して直接効力が生じます。
代理権
代理には 、「任意代理」と「法定代理」の2種類あります。
- 法定代理:法律の規定により代理権が発生する(例:親権者など)
- 任意代理:本人の意思に基づいて代理権が発生する(例:委任にによる代理人)
一応、一覧にまとめてみました!
代理の種類 | 意味 | 代理権の発生原因 |
---|---|---|
法定代理 | 法律の規定により 代理権が発生する場合 |
・法律上当然に(親権者・成年後見人等) ・一定の者の協議(協議による親権者等) ・裁判所の選任(裁判所が定めた親権者等) |
任意代理 | 本人の意思に基づいて 代理権が発生する場合 |
本人の代理人に対する代理権授与行為 (委任契約に伴うことが多い) |
法定代理人は「法定代理人」と記載されるので、宅建試験で「代理人」と記載される場合は、任意代理人のことを指します。
自己契約と双方代理の禁止
代理権には制限があり、同一の法律行為について下記の2つは原則禁止されています。
- 自己代理:代理人が契約の相手方になること
- 双方代理:代理人が本人と相手の両方の代理人になること
具体的な例で見てみましょう。
自己契約
本人(売主A)は甲土地売買契約の代理としてBに代理権を与えました。しかしBは甲土地がほしかったので、甲土地売買契約の相手方となって買主として契約してしまいました。
代理権には、買主を探すことに加え「価格交渉をする権利」や「契約を締結する権利」を与えられていることが一般的です。
Bは価格操作などをして自分に都合のよい条件で契約することができ、本人Aの利害が害されてしまいます。
なので、自己代理契約は禁止されています。
双方代理
乙土地を売りたい本人Aと乙土地を買いたい相手方Cの両方の代理人にBがなって乙土地売買契約を締結してしまいました。
本人と相手方の両方の代理人となると、とぢらか一方に対して有利な契約になる可能性があります。
そうなるとどちらか一方の利益が害されることになるので、双方代理は禁止されています。
自己契約と双方代理の例外
このように自己契約と双方代理は、事実上ひとりで契約することになり正常な法律行為を望めなくなるため禁止されています。
しかし、下記の2つの場合は例外です。
- 本人があらかじめ許諾した場合
- 本人に不利益となるおそれのない債務の履行
民法第108条
同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない。
ただし、債務の履行及び本人があらかじめ承諾した行為については、この限りではない。
「本人の不利益となるおそれのない債務の履行」とは、たとえば移転登記の申請などです。
すでに契約が成立した後に事務処理をするだけなので、事務処理をする司法書士は双方を代理しても仕事をすることが可能です。
代理権の消滅
代理権が消滅する条件は法定代理と任意代理で異なります。
詳しくは表にまとめてみました!
代理権の消滅原因 | |
---|---|
任意代理・法定代理に 共通の消滅原因 |
①本人の死亡 ②代理人の死亡 ③代理人に破産手続開始の決定 ④後見開始の審判 |
任意代理に特有の 消滅原因 |
①委任の終了 (本人(委任者)の破産手続開始の決定など) |
法定代理に特有の 消滅原因 |
それぞれの法定代理の規定による (親権の濫用による親権の喪失など) |
代理権は相続できないので、代理人が死亡した時点で代理権は消滅します。
本人が死亡しても代理権が消滅します。
もし、本人の死亡の事実について代理人が知らずかつ知らないことにつき過失がなくても契約はできなくなります。
代理人が後見開始の審判を受けたら代理権は消滅することに対し、本人が後見開始の審判を受けても代理権は消滅しません。
代理人の能力
民法102条
代理人は、行為能力者であることを要しない
民法では、上記のように規定してあるので本人が委任すれば未成年等の制限行為能力者であっても代理人になることが可能です。
なぜなら、代理行為の効果は代理人に帰属しません。
代理行為の効果は本人に帰属します。
そのため代理人が制限行為能力者であってもその代理行為を行った結果、不利益を生じるのは本人なので、その代理人は不利益は受けないからです。
しかし制限行為能力者に代理権を授与するために、代理権委任契約をむすぶときは、保護者の同意が必要です。
保護者の同意なく代理権委任契約を結んだらその契約は取り消すことができる契約になります。
でも、制限行為能力者の保護者が代理権委任契約に同意して、代理人となった制限行為能力者は、その代理権の範囲内で保護人の同意なく有効な代理行為ができます。
たとえば、本人Aが甲建物売買の契約について、未成年Bに代理権を授与しました。
未成年Bの親権者は、Bがこの甲建物売買契約の代理人になるに同意しました。
未成年BはAの代理人としてCと甲建物売買契約を結びました。
この場合、Cは代理人のBが未成年だからといって契約を取り消すことはできません。
この甲建物売買契約は有効に成立し、その効果は本人に帰属します。
この論点は、本試験に頻繁に出るのでしっかり理解しましょう
制限行為能力者について詳しくはこちらです。→制限行為能力者
代理行為の瑕疵
契約の際に心裡留保や虚偽表示・錯誤などの意思の不存在または、詐欺や強迫がある場合があります。
そのような代理行為に瑕疵があったか、なかったかは「代理人」を基準に決められます。
民法101条1項
意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫またはある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は代理人について決するものとする。
代理行為の効果は直接、本人に対して効果を生じます。
なので、代理行為にて契約した際に、意思の不存在(心裡留保・虚偽表示・錯誤)があり、無効となった場合は本人について生じます。
契約の際に、代理人が詐欺や強迫にあった場合にこの契約を取り消す権利(=取消権)は本人に認められます。
しかし次の場合はどうでしょう?
BはAの代理人として、Cと売買契約をした際、Cから詐欺にあいました。
しかし、Aはその詐欺について知っていました。
こういう場合は、たとえ代理人Bが詐欺について善意無過失であっても、本人Aは詐欺にて結ばれた契約を取り消すことはできません。
担保責任を追及できるのも、本人です。
たとえば、代理人Bが本人Aを代理して購入した家に瑕疵が発見された場合、本人は売主Cに対して損害賠償等の請求をすることができます。
しかし次の場合はどうでしょう?
本人Aは代理人Bに相手方Cの甲建物を買う代理権を与えました。
しかしその甲建物には瑕疵があり、その瑕疵について代理人Bは知りませんでしたが、本人Aは知っていました。(Bは善意、Aは悪意)
この場合は、本人Aは代理人Bが善意なことを主張して売主Cに対して瑕疵担保責任を追及することはできません。
本人Aが何も知らないBを連れてきて悪いことをする可能性があるので、悪意の本人は代理人の善意を主張することができません。
では、代理人Bが相手方Cに詐欺を行った場合どうなるのでしょうか?
代理人Bが相手方Cと契約する際に詐欺を行った場合は、本人Aが詐欺の事実を知っているか否か、又は知らないことについての過失を問わず、相手方Cは当該行為を取り消すことができます。(判例)
「知っているか否か、又は知らないことについての過失を問わず」ということは、悪意でも善意でも有過失でも無過失でもということです。